研究課題/領域番号 |
20H00129
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 量一 京都大学, 工学研究科, 教授 (10263401)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ソフトマター / シミュレーション / 流体力学 / 直接数値計算 / コロイド分散系 |
研究実績の概要 |
柔らかく複雑な内部構造を有する物質を総称してソフトマターと呼ぶ。本研究では、その中でも特にシミュレーションの難易度が高い「メソフルイド分散系」を対象とし、これまで比較的単純な粒子分散系に対して構築してきたシミュレーション手法を大きく発展させることで、i)メソスケール(濃度分布や界面や流動など)のダイナミクスを物理的に矛盾なく基礎方程式に基づいて計算する直接数値シミュレーションの手法構築と、ii)それを用いた強力で適用性の高い直接数値シミュレーションソフトウェアの開発を実施する。これらの目標を達成するためには,注目するメソスケールの時間変化を捉えられる直接数値シミュレーション手法の開発が必要である。本研究では手法の構築にとどまらず、第三者が 利用可能なソフトウェアを開発・公開することで、ソフトマター分野における計算科学の社会実装を目指す。 数値計算専用のクラスター計算機を京都大学に導入し、モデルの構築と大規模シミュレーションを実現することができた。クラスター計算機については性能向上のスピードが速いので、当初年度に一括導入せずに研究の進捗に伴って必要となる追加の計算機資源を必要に応じて追加導入する。論文2報を出版すると同時に、国内の学会において研究成果の発表を行った。研究を強力に推進し、かつ次世代の研究者を養成するために、博士研究員1名の雇用を開始した。 2021年3月には、メソフルイド分散系の直接数値計算を実施するためのソフトウェア「KAPSEL-4.20」の一般公開を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有効なシミュレーションを行うための難易度が高いメソフルイド分散系を対象とし、これまで比較的単純な粒子分散系に対して構築してきたシ ミュレーション手法を発展させ、上記のi)およびii)を実現すべく、そのための具体的な対象としてとして、研究期間中に以下の実施項目に取り組む計画である。 実施項目1:メソフルイド分散系の直接数値シミュレーション法の構築 実施項目2:直接数値シミュレーションソフトウェアの開発 実施項目3:ソフトマター以外への応用 実施項目1はメソスケールの遅いダイナミクスとマイクロスケールの系の挙動の双方向結合が重要な事例であり、各スケールに限定された既存 のシミュレーション法をそのまま適用できない問題である。実施項目2で直接数値シミュレーションを実施するソフトウェアを開発し、第三者 による使用を通じて計算科学の社会実装の実現につなげたい。さらに実施項目3によりメソフルイド分散系に対する直接数値シミュレーション 手法を他分野の問題に応用し、この方法の広い有効性を実証する。 2020年度は、実施項目1について「メソフルイド分散系に対するモデル構築と検証」、実施項目2について「シミュレーションソフトウェア の基本設計」を完了した。これらは当初の予定通りであるので、順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度にモデル構築に取り組み、大規模なシミュレーションを順次実行することに成功した。 2021年度は、実施項目1について「粒子と溶媒の親和性の導入と検証」に、実施項目2について「シミュレーションソフトウェアのコード開発」 、実施項目3について「自己推進粒子系への応用」に取り組む予定である。国内外において、研究動向の調査と研究成果の発表を行う。2020年度は、コロナウイルスの感染拡大により研究成果を国際会議で発表することができなかったため、2021年に複数の国際会議で発表することを計画している。
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