研究課題/領域番号 |
20H00135
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐々木 浩一 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50235248)
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研究分担者 |
白井 直機 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80552281)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラズマ・液体相互作用 / 界面近傍の液相 / 短寿命活性種 / 水ジェット / レーザー誘起脱溶媒和 / ルミノール化学発光 / 表面張力 |
研究実績の概要 |
低ガス圧誘導結合プラズマに水ジェットを入射する実験装置を設計・製作した。水ジェットは内径が50マイクロメートルのPEEKチューブをノズルに用いて生成した。水ジェットの下方には液体窒素冷却されたトラップを設置し,プラズマを通過した水を真空中で凍らせて保持した。水ジェットの直近にスキマーを設置し,プラズマ中のガスをサンプリングして四重極質量分析器で分析できるようにした。この装置を用いて,ヘリウムプラズマを生成したときのプラズマ中のガス組成を分析する実験を開始している。 ルミノールの化学発光による水中の短寿命活性種の検出では,従来からわかっていたOHラジカルに加えて,プラズマから電子または負イオンが液相に輸送されるとルミノールが化学発光することがわかった。気液界面領域における水和電子の生成に起因すると考えられ,ルミノールの化学発光が水和電子の検出にも利用できる可能性を示した。 レーザー誘起脱水和の実験では,水面を陰極とし,その上方の針電極を陽極とする直流放電において,水側からプラズマ照射点にパルスレーザーを照射すると,放電電流にパルス的な時間変化が生じることを示した。また,波長可変色素レーザーを用い,パルス電流の振幅とレーザー波長の関係を調べたところ,水和電子の溶媒和エネルギーと矛盾しない結果が得られた。これにより,レーザー誘起脱水和によりプラズマ・水面近傍領域に存在する水和電子を検出できることを示した。 プラズマと相互作用する水の表面張力測定では,テレフタル酸を用いて水中のOH密度を低下させると表面張力が増加しないことを示し,プラズマ照射による表面張力増加の大元の原因がOHラジカルであることを示唆した。しかし,表面張力の時間変化の測定からは,OHラジカルが表面張力を増加させるのではなく,OHラジカルを元にして生成される別の化学種が表面張力を増加させていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上に述べたように,令和2年度においては,研究計画調書に記載した研究計画のうち,ルミノールの化学発光の絶対強度計測(放出される光子の絶対数の測定)をのぞき,すべての計画を完遂した。一方,研究計画調書では令和4年度に計画したプラズマと相互作用する水面の表面張力の時間変化計測を,令和2年度に先行して実施した。また,研究計画調書では,誘導結合プラズマに水ジェットを入射する装置の完成は令和3年度の予定となっていたが,令和2年度のうちに完成し,ある程度の調整を経て本格的な実験を開始するに至っている。以上のことから,本計画は総合的にみて当初予定を超える進度で進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度においては,令和2年度に積み残したルミノールの化学発光の絶対強度計測を実施する。また,令和2年度に完成した誘導結合プラズマに水ジェットを入射する実験装置をフル活用する。研究計画調書を作成した時点では考えていなかったが,現在は,この装置をプラズマ・液体界面における電気化学反応(気液界面電解反応)および水表面を活用した触媒反応の研究に活用できるとの着想を得ており,この視点を研究計画に加える。なお,その他については研究計画調書に記載したとおりに研究を進める。
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