研究課題/領域番号 |
20H00146
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末包 文彦 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 教授 (10196678)
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研究分担者 |
川崎 健夫 北里大学, 理学部, 教授 (00323999)
菅谷 頼仁 大阪大学, 核物理研究センター, 助教 (80324747)
今野 智之 北里大学, 理学部, 助教 (60751518)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ニュートリノ原子核反応 / 静止崩壊ニュートリノ / 電子ニュートリノ検出 / 超新星爆発ニュートリノ |
研究実績の概要 |
2020年度は,以下のように,(1)ニュートリノ検出器の開発及び基礎設計,(2)オンサイトでのバックグラウンド測定の準備,(3)ニュートリノフラックス測定のためのJSNS2実験の準備を行った. (1)モンテカルロシミュレーションおよび文献調査により,ニュートリノと鉛の反応についての理解を深め,ニュートリノ反応の信号について検討し,ニュートリノ検出効率やバックグラウンド除去能率の評価を行い,ニュートリノ検出装置の基礎設計を行った.それを元にしてConceptual Design Report (CDR)を執筆した.シンチレーターの波長変換ファイバー読み出しのテストを行った.東北大の電子光理学研究センターを訪問し,30MeVの電子を用いて行うテスト実験の検討を行った. (2) オンサイトでのバックグラウンド測定のため,J-PARC MLFの現地調査を行い,実験候補場所を決定した.それを元にバックグラウンド測定の計画書を作成し,MLFに緊急課題として申請した.この申請は審査の後認められた.バックグラウンド測定のため,PANDA検出器を解体し,バックグラウンド測定用の8本システムを製作し,宇宙線と放射線ソースを用いテストを行っている. バックグラウンド測定に使用する,CsI, NaI, 波形弁別能力を持つ新しいタイプのプラスチックシンチレータのテストも行った.読み出しエレクトロニクスの調整も行った. (3) JSNS2実験の実験準備を行い6月に最初のデータ収集を行うことに成功した.2021年1月から2期目のデータを収集中.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19のため,対面の打ち合わせや大学間の共同作業が不可能であり,研究を進める効率が非常に悪かったが,毎週オンラインでミーテイングを開き,作業分担を工夫し,以下のように実験準備を進めることができた.そのため,本研究はおおむね順調に進展しているということができる. MCや文献調査,毎週のミーテイングでの議論によりニュートリノ検出装置の基礎設計を殆ど完成することができた.この基礎設計書(CDR)は2021年春に投稿する予定.実験現場の調査を行いバックグラウンド測定計画を策定し,MLFの審査を経て,現場でのバックグラウンド測定の許可を得ることができるなど,対外的な交渉も順調に進捗している. 我々の経験の少なかったプラスチックシンチレーターのファイバー読み出しのテストにも成功した.PANDA検出器を解体し,バックグラウンド測定のための8本システムを製作し,宇宙線を用いてテストを行うことができるようになった.ニュートリノフラックスを測定することになるJSNS2実験もデータ収集に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
(1) J-PARCのMLFでのバックグラウンドの測定:MLFでのバックグラウンド測定のため,粒子識別能力のあるプラスチックシンチレーター,CsIシンチレーター,PANDAを8本使ったシンチレーターアレイを開発・製作する.データ収集システムを構築する.実際にMLFビームラインに持ち込み,バックグラウンドの測定を行う.バックグラウンドデータを基にし,検出器の最終的な構造を決定し,本番実験の検出器を設置する場所の選定を行う. (2) ニュートリノ検出器の設計製作: 検出器の基礎設計に関する論文を投稿する.ニュートリノ検出器の構造を(1)で測定したバックグラウンド量を参考にして決定する.プラスチックシンチレーター,波長変換ファイバー,鉛シートなどを購入し,ニュートリノ検出器を製作する.ケーブル,MPPC,データ収集用PC,データストレージなどを購入し,データ収集回路システムを完成し,宇宙線を用いて測定器の調整を行う. (3) コミッショニングデータ取得の準備: 秋に本番のニュートリノ測定計画にPACに申請する.申請が認められた場合,3月に本番検出器をMLFに持ち込み,コミッショニングデータの取得を行う. (4) JSNS2実験でデータ取得を行い,ニュートリノフラックスを出す解析方法を開発する.
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