研究実績の概要 |
申請者らは、電子散乱という反応機構の不定性が最も少ない手法を用いて不安定核の電荷分布を測定する装置を開発し、検証実験を行っている。2022年度には検出器の導入及びXe同位体ガスの輸送システムの最適化を終え、当該年度にて実験を実施予定であったXe同位体を標的とした電子散乱に関しては、繰越期間においてデータを取得した。具体的には124Xe,126Xe,128Xe,130Xe,132Xe,134Xe,136Xeを標的とし電子ビームエネルギー150MeV、運動量移行にして0.4-0.8 fm^{-1}における反応断面積を測定した。この運動量移行領域は原子核の平均半径に強い感度を持ち、これまでにレーザー分光のアイソトープシフト測定やミュオン原子を用いた測定の結果との直接比較が可能となる。SCRIT電子散乱施設における同位体依存性の検証実験としては初の測定であり、非常に重要なデータを取得することができた。施設のアップグレード後に不安定核138Xe標的が可能となれば、中性子魔法数N=82をまたいだ原子核半径の変化を議論できるようになる。また将来の(例えば)不安定核を含むSnの同位体依存性研究に向けた意義のあるマイルストーンを達成できたといえる。電荷分布に関する物理データを引き出すためには電子ビームエネルギー250MeV、運動量移行にして0.7-1.2fm^{-1}におけるデータが追加で必要であり、その測定に関しては次年度の研究計画として実施予定である。
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