研究課題/領域番号 |
20H00152
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梶田 隆章 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40185773)
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研究分担者 |
山本 尚弘 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (00796237)
宮川 治 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (90532680)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 重力波 / 重力波検出実験 / レーザー干渉計 / 制御 / 信号取得 |
研究実績の概要 |
KAGRAは2020年4月に初の国際観測を終え、現在はアップグレード期間となっている。KAGRA初の本格的な観測を終えた段階で、観測機に対する安定度の要求は、その重要度がさらに認識されることとなった。長期間の安定的な稼働が現在の技術では難しく、データ解析に耐えうるようなデータになっていないのである。これは本研究の初期の目的のところにも書いた、感度そのものよりもデータとしてのクオリティーが十分でないことが指摘されたのである。本研究は重力波検出器の安定度を上げるための研究であり、本研究が目指すモニターポイントの追加と、広いダイナミックレンジを持つことで、今後の観測の安定向上に大きく貢献できと期待されている。 2020年度は、新規の信号取得モジュールを設計し、テスト分の2台を試作した。そこに必要な基板などを組み込み、稼働テストを試すところまで来ている。また、信号入出力のためのデジタル/アナログのコンバーターを用意し、一部はKAGRA本体に実装済みであり、実際の信号チャンネル数を増加し、現場でのアップデートの際にも既に役に立っている。また、安定稼働と感度向上にもつながると考えられる20ビットのデジタルアナログコンバーターは、KAGRA本体で必要な枚数を選定、購入し、実装のためのソフトウェア側の準備を進めている。 KAGRAのアップグレードは2021年度終わりまで続く。その間、KAGRA本体への全ての機器の実装をめざし、高分解能のデータ取得の実用化を進めていくことで、2022年度に始まる国際観測での安定した稼働を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は主に新規でデータ入出力モジュールを開発した。これは16枚までのアナログデジタル変換ボード、デジタル変換ボード、及びデジタル入出力ボードを搭載でき、KAGRAないの任意の場所において各機器を制御するためのものである。現在までにシャーシの設計を完了し、2台分の試作機の製作をした。同時に、内部に搭載するPCIeボードなどの発注や設置を進め、また電源基板なども設計、製作を完了した。試作したシャーシ1台に全ての必要な基板など組み込み、全てのケーブル配線をして、現在試作機単体でのテストを進めている。 また20ビット、8チャンネルのデジタルアナログコンバーターを追加で購入し、上記の新型信号入出力システムでのテスト運用を進め、重力波観測鏡の制御経緯の最終段に取り付ける準備を進めている。20ビットに対応するようなアンチエイリアスやアンチイメージのためのフィルター回路も既存の設計を、低ノイズ化に対応するために一部変更する形で、上記20ビット化に対応したものを製作した。 KAGRA本体の安定化のために導入する機器の準備については、非常に順調であるが、新規20ビットのデジタルアナログコンバーターについては、ソフト側で既存のシステムでは対応が難しいことが確認されていて、ドラバイバー類のアップデートが必要なことがわかった。KAGRA本体の制御用ソフトのアップグレードは、既にKAGRAが安定稼働しているため、タイミングを計る必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、KAGRAは引き続きアップグレード期間となる。その間に、本研究で開発している新型の信号入出力モジュールを追加で10台程度製作し、実際にKAGRA本体へ一部導入することを考えている。新規の入出力モジュールについてはそれまでに試作機2台での不具合を洗い出し、問題点をフィードバックすることで、残りの必要台数を現場レベルで使えるものに仕上げていく。その後KAGRAへの導入へとつなげ、これまで信号取得が難しかった場所で、新たにモニターポートなどを追加していく。 KAGRAへの導入の際には、既存の16ビットのアナログ/デジタル変換のためのボードを追加し、信号数をさらに追加する計画である。また、20ビットのデジタルアナログコンバーターを導入することで、信号のダイナミックレンジを増やす。20ビットデジタルアナログコンバーターへの対応のためにKAGRAの制御系ソフトウェアのアップデートを試みる。これはKAGRA本体の全ての作業を止めて行わなければならないため、プロジェクト全体の合意を得る必要があり、その上で時期を確定する。その後のコミッショニング中に安定度を評価する。 2022年度6月以降に、再びKAGRA、LIGO、VIRGOの国際共同観測が始まる予定である。1年間程度の観測期間になるが、本研究の成果の信号増強と、高分解能によるダイナミックレンジの増加で、さらなる安定的な稼働状況を作り出すことが期待される。
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