研究課題
本年度は、主に以下の4つの研究を実施した。(1)MEG II 実験の液体キセノン測定器を用いてビーム試験による性能評価を実施し、シミュレーションとの比較により、新実験の測定器のデザインの最適化を実施した。(2)新実験に使用する光センサーの候補であるMPPCについて試験を行い、その特性の理解を進めた。(3)陽電子入射面の物質量を削減したプロトタイプ測定器についてさらにデザインの検討を行った。(4)米国・カナダを中心とする研究グループと実験全体の概念設計をさらに進め、最終的にPSI研究所に実験プロポーザルを提出した。以下、それぞれの研究についてその概要を順に記す。(1)ビームによる測定器性能試験は、新型コロナウィルス感染の拡大を受けて実施場所であるスイスPSI研究所への渡航と現地での研究が制限されたため、翌年度の実施へ計画を変更した。翌年度は制限が緩和され、計画通り性能試験を実施して新実験測定器デザインの最適化を進めることができた。(2)半導体光センサーMPPCは、光子検出効率が低温、ビーム環境下で減少するという問題が起こっており、この問題の原因を調査するために小型試験装置を準備してセンサー単体での試験を実施した。まだ原因の究明には至っていないが、定期的なアニーリング作業により検出効率を復活させて実験を実施できることがわかった。(3)プロトタイプ測定器の設計はほぼ完成し、今後必要な部品・材料の検討に入る。(4)国際研究グループとの共同による実験全体の概念設計は、予想以上に進展した。特にアクティブターゲットの検討が大きく進み、最終的に、新実験を実施するPSI研究所への実験プロポーザルを完成させるに至った。2022年1月に実験プロポーザルはPSIの国際研究委員会により承認され、PSIでの実験に向けて本格的な準備を始めることになった。
1: 当初の計画以上に進展している
新型コロナウィルス感染の拡大により一部の研究を翌年度に繰り越して実施することになったが、新型光センサーなどコンポーネント技術の理解が進み、新実験用液体キセノン測定器とアクティブターゲットの概念設計が大きく進展した。これにより、米国・カナダの研究グループと共同で実験プロポーザルを完成させ、PSI研究所に提出するに至った。その結果、2022年1月にPSIの委員会により実験の実施が承認され、本研究の当初の目的であった「新実験の設計・提案」を達成することができた。今後は新実験の実施に向けて、詳細設計のための開発研究と実験装置の建設準備へと移ることになる。
新実験のプロポーザルが完成して、PSI研究所から実験の実施が承認されたため、今後は新実験の実施に向けて、詳細設計のための開発研究と実験装置の建設準備へと移ることになる。新実験の技術的な詳細をさらに詰めるため、プロトタイプ測定器によるビーム試験やシミュレーションによる検討を実施していく。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件) 備考 (3件)
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