研究課題/領域番号 |
20H00160
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
兼村 晋哉 大阪大学, 理学研究科, 教授 (10362609)
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研究分担者 |
進藤 哲央 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (60553039)
青木 真由美 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70425601)
柿崎 充 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (90612622)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒッグス粒子の物理 / 電弱対象性の自発的破れ / 電弱相転移の物理 / 標準理論を超える新物理 |
研究実績の概要 |
ヒッグスセクターの物理は、電弱対称性の自発的破れの力学的要因や、標準理論を超える新物理を決定するうえで鍵となる。本研究では、未解決の諸現象を説明する新物理モデルに現れるヒッグスセクターを系統的に研究し、様々な実験を組み合わせてヒッグスセクターを解明することから新物理に迫る方法を明らかにする。 現行の各種実験の成果を踏まえつつ、将来の比較的近い時期に実施される 1) 高輝度LHCでの新粒子探索、2) ILC等の将来レプトンコライダー実験におけるヒッグス精密測定、 3) 将来の宇宙空間における重力波干渉計(LISAやDECIGO計画等)における電弱相転移の検証等を融合して、ヒッグスセクター解明の新時代に向けた理論的研究を世界に先駆けて実施する。本研究では期間5年間を以下の3段階に分けて実施する。 (第一段階 2020年度) 拡張ヒッグス模型の理論的性質と既存実験による制限の研究、 (第二段階 2021-2022年度) 各実験で相補的にモデルを検証するための理論的研究、 (第三段階 2023-2024年度) 3実験の相乗効果でヒッグスセクターを解明する方法の確立。 2020年度(R2年度)は、コロナ禍に起因して一部の研究については遅延が生じたが、それ以外の研究計画については概ね順調に進展したと考えている。上記研究に関する成果は13報の学術論文として出版し、また国際研究集会、国内学会、研究会で約30回程度の研究発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CPの破れに対する電気双極子モーメント(EDM)からの制限をクリアするパラメータ領域を調べた。拡張ヒッグスセクターを電弱スケールで予言する高エネルギー領域における大局的対称性に注目し、高エネルギー領域での大局的対称性が低エネルギー(電弱)領域のヒッグスセクターの性質に及ぼす影響を研究した。 階層性問題を解決する可能性の一つとして、右巻きニュー トリノを導入し、その量子補正によってヒッグス粒子の質量スケールを導く方法が提案されており、古典的スケール不変な枠組みでは必要とされる右巻きニュートリノの質量は中間スケール程度になることが知られていたが、この手法を隠れたQCDセクターをもつスケール不変な模型に適用し、スケール生成が実現できることを示した。さらに隠れたセクターの破れに伴い出現する南部ゴールドストンボソンが暗黒物質となり、非熱的残存によって観測されている残存量を説明できることを示した。 主に、アクシオンゲージ場模型と呼ばれるインフレーションの拡張模型において、ゲージ場由来の重力波揺らぎが大きくなる場合の現象論的制限を調べた。先行研究で考慮されていなかったアクシオンの崩壊によって生じる暗黒輻射の制限が厳しいことを初めて指摘し、この制限とも無矛盾なパラメータ領域があることを示した。 ヒッグスセクターに2つの新たな2重項を導入した拡張模型における、フレーバー物理やCPの破れの現象論を研究し、荷電ヒッグス混合のCP位相によるB to X_{s,d} gamma過程に対する寄与について示した。また、この枠組みで2個の暗黒物質を含む場合の模型の性質を調べ、加速器現象論を研究するためのベンチマークシナリオを構築した。これらの研究成果を査読付論文2本にまとめて出版した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では期間5年間を以下の3段階に分けて実施する。 (第一段階 2020年度) 拡張ヒッグス模型の理論的性質と既存実験による制限の研究、 (第二段階 2021-2022年度) 各実験で相補的にモデルを検証するための理論的研究、 (第三段階 2023-2024年度) 3実験の相乗効果でヒッグスセクターを解明する方法の確立。
これまでに、研究計画の第一段階が、一部を除いて完了し、第二段階に入っている。今後は、第一段階で未完了の研究を完遂するとともに、第二段階の研究を進展させることに集中する。またこれまでに得られた成果を論文にまつめ、国際研究集会、学会などで積極的に発表していく。
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