研究課題/領域番号 |
20H00169
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
渡邉 裕 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50353363)
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研究分担者 |
平山 賀一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (30391733)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中性子過剰アクチノイド同位体 / r過程元素合成 / 多核子移行反応 / レーザー共鳴イオン化 |
研究実績の概要 |
KEK同位体分離装置(KISS)において、ウラン・ビームとウラン標的の多核子移行反応で中性子過剰アクチノイド同位体を生成し、ガス・セルで収集、レーザー共鳴イオン化と双極電磁石により単一核種を分離した後、精密質量測定や分光実験を行うこと目的としている。本年度は大型ガス・セルの開発、およびレーザー共鳴イオン化スキームの開発を行った。 熱流体解析ソフトウェアを用いて設計した大型ガス・セルを、製作会社と相談して適宜修正を行って製作し、組み立て試験、気密試験を行った。 レーザー共鳴イオン化では中性原子を励起レーザー光により元素に特有の励起状態に遷移させ、別のイオン化レーザー光によりイオン化する。イオン化レーザーとして波長308 nmのエキシマ・レーザーを用い、励起レーザーとして色素レーザーを用いている。励起状態としてアクチニウム(原子番号89)からプルトニウム(原子番号94)までの元素を一つの色素で励起できるエネルギー領域を選択して色素を製作し、レーザーの発振と経路の調整を行った。 理化学研究所仁科加速器科学研究センターのリングサイクロトロンにより加速されるウラン・ビームを白金標的に照射して多核子移行反応で生成される中性子過剰アクチノイド同位体を従来のアルゴン・ガス・セルを用いて引き出すことで、レーザー共鳴イオン化スキームの試験を実施した。ガス・セルの入射窓にチタン箔のエネルギー減衰板を設置して入射散乱核として生成される中性子過剰アクチノイド核をガス中で高効率で停止させることに成功し、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウムの中性子過剰核をレーザー共鳴イオン化できることを確認した。 中性子過剰アクチノイド同位体に対するレーザー共鳴イオン化スキームを確立することができ、回転ウラン標的が整備されれば、完成した大型ガス・セルを用いてより中性子過剰なアクチノイド同位体にアクセスすることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
熱流体解析ソフトウェアを用いて設計したガス・セルを製作するにあたり、製作上の問題が発見されたため、製作に時間を要した。製作会社と相談を重ねることで問題を適宜解決して完成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
大型ガス・セルをKISSの真空槽内に設置し、ガス・セル内に導入した白金やイリジウムのフィラメントから蒸発させた原子を用いてレーザー共鳴イオン化とイオンの引き出し試験を行う。大型回転標的を製作するための回転ホイールの設計を行い、真空槽内で回転試験を行う。圧延器を用いて適切な厚さのウラン標的の製作を行い、ウラン標的を用いたビーム照射実験の準備を整える。ウラン・ビームと白金標的の多核子移行反応で生成される中性子過剰アクチノイド同位体に対して従来のガス・セルでより中性子過剰な同位体のレーザー共鳴イオン化試験とイオンの引き出しを行う。
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