研究課題/領域番号 |
20H00172
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
濤崎 智佳 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (40356126)
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研究分担者 |
鎌崎 剛 国立天文台, アルマプロジェクト, 助教 (00413956)
田中 邦彦 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (00534562)
小宮山 裕 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (20370108)
江草 芙実 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30644843)
廿日出 文洋 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70719484)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 星間物質 / サブミリ波 / 中性炭素原子 / 低金属量銀河 / デジタル分光システム |
研究実績の概要 |
本研究は、高い空間分解能での観測が可能な近傍の低金属量銀河 NGC 6822 をターゲットとして、中性炭素原子[CI]輝線の銀河全体にわたる広域データを取得し、中性炭素原子輝線の強度や分布がどのような物理的・化学的状態を反映しているのか、観測的に明らかにすることを目的としている。近年、中性炭素原子輝線は、特に高赤方偏移銀河で頻繁に観測されるようになり、低温分子ガスのトレーサーとして解釈されるようになってきているが、空間的にあまりよく分解できていない(空間的に積分されている)観測結果を正しく理解する上で、星形成の直接的な母体である分子雲の空間スケールまで分解した広域観測を行い、解釈の基盤を確立することが急務となっている。こうした観測を実現するため、本研究は、優れたサブミリ波観測サイトであるアタカマ高地に設置・運用されているサブミリ波望遠鏡ASTEに、広帯域かつ高い周波数分解能を有する新しい分光観測システムを開発・導入することが大きな柱の一つとなっている。以上の目的および内容を踏まえ、4年計画の1年目となる2020年度は、導入する新分光観測システムの構成および必要な装置を整理するとともに、開発のために必要な物品の調達を開始した。フーリエ型デジタル分光器ボード XFFTSとその駆動のために必要なXFFTSクレート部、および電源部を調達し、さらにその制御用計算機を導入した。また、中性炭素原子輝線の観測を行うアルマ Band-8受信機に相当するサブミリ波受信機からの中間周波数信号を受け取り、信号レベル調整や周波数変換を行うIF回路部の開発も開始した。また、望遠鏡と分光器システムとの時刻同期のために必要なGPS受信機と必要な信号変換装置の導入も進めた。こうした開発に加え、観測に必要なソフトウエア類の仕様を策定し、その開発にも着手することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、当初予定していた、ASTE望遠鏡の設置場所であるチリへの渡航が困難となっている。このため、望遠鏡へ必要な装置を輸送し、その搭載に向けた準備を行う作業に遅れが生じている。実験室において実施可能な作業を進めているとはいえ、全体としてはやや遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
分光計搭載に向けて、コロナ禍によって現地調査・輸送・搭載作業の具体的なプロセスが阻まれているが、今後海外渡航の制約など諸問題が解消し、搭載に向けた作業が可能になった際に速やかに実行できるよう、可能な限り、実験室で出来る作業を進め、慎重な準備を行なっていく。また、観測ターゲットである低金属量銀河 NGC 6822については、すばる望遠鏡等による既存のデータの確認・解析を進めるとともに、新たな観測提案の準備なども進める。ASTE望遠鏡での観測が開始された際に、速やかにそのデータを活用し成果を挙げることができるよう、着実に準備を進める予定である。
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