研究課題/領域番号 |
20H00175
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 浩典 大阪大学, 理学研究科, 教授 (90311365)
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研究分担者 |
山口 弘悦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (00513467)
粟木 久光 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (30252414)
坪井 陽子 中央大学, 理工学部, 教授 (70349223)
前田 良知 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (80342624)
石川 久美 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (00709173)
三石 郁之 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (90725863)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | X線天文学 |
研究実績の概要 |
Athena は、欧州宇宙機構が2014年に大型衛星計画として採択したX線天文衛星である。大面積のX線望遠鏡を搭載し、検出器には高いエネルギー分解能を誇るTESマイクロカロリメーター (X-IFU) と、広い視野でX線イメージを撮像する DEPFET (WFI) を採用する。これらの観測機器により、遠方の活動銀河核や銀河団からのX線放射を観測し、巨大ブラックホールの成長過程と宇宙の大規模構造形成を明らかにすることが目的である。規模が大きいことから、欧州のみならず、日本および米国の協力が必須の国際天文衛星計画となっている。日本は、科学成果の創出、およびX-IFU用の冷凍機他のハードウェアへの貢献が期待されている。 Athenaの科学活動は、約10人の科学者からなる Athena Science Study Team (ASST) がリードしている。ASST の活動に参加し、キープロジェクトサイエンスの創成や観測計画素案の議論に参加した。また、日本の次期X線天文衛星XRISMとのコラボレーションの議論を始めることができた。 AthenaのX線望遠鏡は、シリコン基板を多数重ねる Silicon Pore Optics という新しい方式のX線光学系である。この光学系は、正規の2階反射以外で視野外のX線が混入する迷光が多いという弱点を持つ。我々は迷光を減らすべく、SPOの前段にプリコリメターを置くことを提案している。ガラス基板による軽量プリコリメターのデザインを行い、試作を行った。また、このX線望遠鏡はシリコンの吸収端のところで反射率が低下する欠点があるが、我々はこれをダイアモンドライクカーボンによるコーティングで防ぐことを提案している。実際に使用されるシリコン基板にダイアモンドライクカーボンをコーティングし、X線望遠鏡の組立工程に耐えることを実証した。また我々はその一環で、新たなX線光学系の設計やX線照射実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Athena Science Study Team におけるキープロジェクトサイエンスの議論に参加し、日本側のプレゼンスを示すことができたと考えている。特に、XRISM とのコラボレーションに関する議論を始められたことは、Athena のみならず、XRISM にとっても大きな意義があると考えている。また、ガラスを使用した Athena のX線望遠鏡用のプリコリメターは、試作までを行うことができた。ダイアモンドライクカーボンによるコーティングも、実際に使用できる可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
XRISM とのコラボレーションは、観測時間の配分やチーム編成のやり方など、より具体的に内容を詰めていく必要がある。プリコリメターは、実際の望遠鏡モジュールに噛み合わせ、その結果を反映した次期試作に進む必要がある。
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