研究課題/領域番号 |
20H00178
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡 朋治 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (10291056)
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研究分担者 |
小嶋 崇文 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (00617417)
竹川 俊也 神奈川大学, 工学部, 助教 (10827851)
西山 正吾 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20377948)
野村 真理子 呉工業高等専門学校, 自然科学系分野, 助教 (50756351)
松本 浩典 大阪大学, 理学研究科, 教授 (90311365)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 銀河系中心 |
研究実績の概要 |
本研究では、既存の大型観測装置を駆使して、銀河系内に無数に浮遊していると考えられる「見えない」恒星質量ブラックホール、および未だ確実な検出例のない「中質量ブラックホール」の探査を強力に推進する。具体的には、ASTE 10m望遠鏡に搭載する超広帯域500 GHz帯受信機を開発し、我々のグループが銀河系中心領域で多数発見した「高速度コンパクト雲」の観測研究を重点的に推し進める。加えて、高解像度イメージングに基づき、一部の高速度コンパクト雲に内包されると考えられる「見えない」ブラックホールの存在確認をあらゆる角度から行う。これらは合体成長を繰り返すことによって中心核「超巨大ブラックホール」の形成・成長に寄与すると考えられており、本研究の成果は一般の銀河と銀河中心核の共進化の理解に貢献する。 研究期間の二年目にあたる2021年度は、初年度に引き続き国立天文台先端技術センターにおける500 GHz帯ヘテロダイン受信機のアップデート作業を進めた。この新受信機システムは秋までに全体のインテグレーションを完了し、2021年12月にASTE 10m望遠鏡へ搭載された。 平行して、既存の大型共同利用観測装置を使用した以下の観測研究を進めた。 1. "Tadpole" の運動解析:重力散乱起源が疑われる高速度コンパクト雲 (Tadpole) について詳細なデータ解析を進め、分子ガスの分布・運動が10万太陽質量の点状重力源周りのKepler軌道で再現できることを見出した。 2. CO 16.134-0.553の詳細観測:銀河系円盤部に発見された高速度幅分子雲 CO 16.134-0.553 について、野辺山45m望遠鏡を使用した観測を行った。その結果、CO 16.134-0.553は直径約15パーセクのシェル状構造の一部であり、それは暗黒物質サブハローの落下により形成された可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ASTE 10m望遠鏡に搭載する新受信機は、順調にアップグレードが完了し、望遠鏡への搭載もほぼ年度当初の予定通りに成された。しかしながら、2021年11月に望遠鏡副鏡の駆動装置に障害が発生し、当装置の修理・調整が必要となった。しかしながら、引き続き南米でも猛威を振るう新型コロナウイルスの影響により、業者によるチリでの現地作業の手筈が直ちには整わず、修理完了とASTE試験観測の再開までに7ヶ月要することが判明した。そのため、年度内に観測を開始することが困難となった。
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今後の研究の推進方策 |
ASTE望遠鏡の副鏡駆動機構に発生した障害は、当初の予想に反して問題が根深く、発生から半年近くが経過した今も未だ原因が判明していない。現在は国立天文台チリ観測所のスタッフが製作業者である三菱電機株式会社の担当部署と綿密に連絡を取り合いながら、現地で復旧作業を進めている。2022年度最初の作業としては、4月中に代替部品等の準備を済ませた上で、5月に本格的な復旧作業に入ることになっている。故障箇所としてもっとも疑わしいのは、複数あるジャッキのうち一つのブレーキモーターであるが、正常動作品と交換しただけでは、問題は完全には解決しなかった。つまり故障は複合的であり、他の要因としてモーター制御線の劣化等も想定される。 何にしろ望遠鏡が動かない限り、本研究の半分は推敲不可能であるため、何としても副鏡の修理を成功させ、早急に観測を開始したい。ASTE 望遠鏡が駆動できない期間は、他の大型共同利用観測装置を使用しつつ観測研究を進めることになる。
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