研究課題/領域番号 |
20H00179
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
冨永 望 国立天文台, 科学研究部, 教授 (00550279)
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研究分担者 |
高田 唯史 国立天文台, 天文データセンター, 准教授 (10300708)
古澤 久徳 国立天文台, 天文データセンター, 准教授 (10425407)
諸隈 智貴 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 主席研究員 (10594674)
田中 雅臣 東北大学, 理学研究科, 准教授 (70586429)
安田 直樹 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (80333277)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光赤外天文学 / 突発天体 / 探査観測 |
研究実績の概要 |
本研究は、観測と理論が融合した「時間軸天文学」を推進し、宇宙に存在する突発天体種族の完全理解を実現するため、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam(HSC)によって取得された全観測データを解析するシステムを構築し、人類が現在観測可能な全突発天体を検出・分類することを目標に研究を行っている。本年は特に以下のような研究を行った。 1. すばる望遠鏡HSCを用いた突発天体探査観測を行い、赤方偏移1.063で発生した青く進化の早い非常に明るい突発天体(Fast Blue Ultraluminous Transient, FBUT) を検出した。その光度曲線から潮汐破壊現象であるか、超新星爆発と星周物質の相互作用か起源を議論した。その結果から、FBUTは青く明るいため、深い突発天体探査観測によって相当数検出可能であることを示した。 その他、突発天体およびその探査に関する研究として、以下のような研究も行った。 2. 機械学習を用いた本物の天体を選択する手法を開発し、Tomo-e Gozen Camera を用いた突発天体探査観測の効率を上昇させた。この手法を用いると、本物の天体の検出率を90%に保ちつつ、誤検出を0.02%まで減らすことに成功した。同様の手法をすばる望遠鏡HSCに適用し突発天体探査を行った。 3. 連星系の種族合成モデルを用いて、異なる核反応率を用いて電子対生成型超新星の発生率を計算した。その結果、広視野赤外線衛星 Euclid によってどの程度検出されるかを明らかにした。核反応率が異なると Euclid によって検出される数が大きく異なり、これらを区別可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度には、すばる望遠鏡HSCを用いて、国立天文台、東京大学を結ぶ高速ネットワーク、すばる望遠鏡から国立天文台までの高速ネットワークを活用した突発天体探査を2回行った。1回目の探査では天候に恵まれず実データを用いた試験に留まったものの、2回目の探査は天候に恵まれ、爆発直後の超新星爆発の検出に成功した。また、Tomo-e Gozen Camera 用に開発された機械学習を用いた誤検出除去のための分類器をすばる望遠鏡HSCによって取得された画像の分類器へと応用し、上記突発天体探査で活用した。 また科学的には、すばる望遠鏡HSCを用いた突発天体探査で発見された青く進化の早い非常に明るい突発天体について論文化し、その起源を議論した。その他、赤外線突発天体探査を用いて、電子対生成型超新星が検出可能であることを示し、核反応率の違いによって検出数が大きく異なることを示した。 以上により、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までにデータ解析スクリプトの準備が完了し、さらにはデータベースサーバの構築も完了し、機械学習を用いた誤検出除去のための分類器についても実際の突発天体探査で使用し、使用可能であることを確認した。しかしながら、Tomo-e Gozen Camera に対して実現できた性能に比べるとその性能が劣るため、その改善が必要となる。特にデータ解析高速化のため画像引き算の手法を変更したことにより、生成される画像が変わったことが原因と考えられるため、生成される画像に対する処理方法を検討する。 それと合わせて過去の観測データの解析も継続し、大量の検出天体から本物の突発天体を選び出し、全突発天体について明るさ・タイムスケールを測定した完全なサンプルを構築する。 また、過去のすばる望遠鏡HSCの観測データを用いて構築された銀河のデータベースやGaiaやPan-STARRSなどの外部カタログと組み合わせ、それぞれの天体の明るさ、タイムスケール、発生率、母銀河の性質に基づき、全突発天体を分類し突発天体の相図を完成させ、それぞれの突発天体種族の多様性や共通点を同定する。
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