研究課題/領域番号 |
20H00185
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
力石 嘉人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50455490)
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研究分担者 |
古川 善博 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00544107)
滝沢 侑子 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (90822536)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | GC-GC-IRMS / 安定同位体比 / 有機化合物 / 高感度分析 / 2次元分離 |
研究実績の概要 |
本研究では,2次元ガスクロマトグラフ-安定同位体比質量分析計(GC-GC-IRMS)を開発する。その目的は,従来の1次元GC-IRMSを用いた測定において,長年の課題であった「GCでの厳格なピーク分離の要求」を抜本的に解決すること,そして,従来法では測定不可能であった多々の試料に関して,有機化合物の安定同位体比測定を可能にすることである。その達成は,生物から環境試料まで,試料中の全ての有機化合物について5W2H(Who, What, When, Where, Why, How, How many)に関する定性・定量的情報を獲得し,地球惑星科学の多様な研究,とくに (i) 生物の生合成・代謝系の機能の研究,(ii) 地球生物圏における有機物・エネルギー循環の研究,(iii) 宇宙空間や初期地球における有機物生成や生命の起源の研究などで,ブレイクスルーをもたらすと期待できる。 本年度(繰り越し期間を含む)は,2020年度に組み立てた「GC-GC-IRMS」の運用方法・測定方法の最適化を行った。 検討項目は,(1)接続部,ガスライン,キャピラリーラインの設計と配置,(2) GC-GCモジュールと燃焼炉の間の温度制御の不安定性の解消,(3)様々な条件(導入部の圧力・温度,GC部の温度,キャリアーガス流速,溶媒の除去のタイミングなど)の最適化,の3点である。 その結果,(1)に関しては,2021年度(2022年度への繰り越し期間を含む)で,全て完了した。一方で,(2)に関しては,様々なメーカーの昇温システム・コントローラーを検討したが,問い合わせた全てのメーカーから「制作不可能」もしくは,「制作が非常に困難である」と回答されるに至り開発が進まなかった。(2)に関しては,引き続き継続課題として対応し,翌年度に,「昇温システム・コントローラー」の自作による解決を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記「研究実績の概要」欄記載のように,「GC-GCモジュールと燃焼炉の間の温度制御の不安定性の解消」が,本研究の重大な課題となっている。本来は,2021年度に解決すべき課題であるが,2021年度に加え,2022年度(前年度の繰り越し期間)を含めても,未だ解決に至っていない。 この課題の解決には,「昇温システム・コントローラー」の制作が必須であるが,コロナ禍のため,(1)業者との打ち合わせが電話・メールに限られてしまい,十分にできないこと,また,(2)業者が新規制作を受け入れられるキャパシティが足りないこと,によりほとんど進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず,(1) GC-GCモジュールと燃焼炉の間の温度制御の不安定性の解決を行い,次に,(2) GC-GCIRMSの完成,及び,有機化合物の安定同位体比の測定に向けて,測定メソッドの確立を行う。温度制御の不安定性の解消は,「加温部の設計」,「ヒーターの選定」,「それらのコントローラーの選定」を独自に行うことで,達成する。 なお,開発が順調に進んだ場合には,実試料の測定を行う。実試料として,実験用に飼育している魚や,栽培している植物に含まれる有機化合物のうち,従来のGC-IRMSでは分析が困難であった脂質,アミノ酸,宇宙からのサンプルリターンを念頭に置いた地球外物質(もしくは,それを模したモデル試料)に含まれる糖分子,アミノ酸を予定している。
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