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2023 年度 実績報告書

氷河融解を加速する3大光吸収性不純物の定量評価

研究課題

研究課題/領域番号 20H00196
研究機関名古屋大学

研究代表者

坂井 亜規子  名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40437075)

研究分担者 竹内 望  千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (30353452)
青木 輝夫  国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 特任教授 (30354492)
的場 澄人  北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (30391163)
松井 仁志  名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (50549508)
大畑 祥  名古屋大学, 高等研究院(宇宙), 助教 (70796250)
谷川 朋範  気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (20509989)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード氷河 / 氷河質量収支 / 光吸収性不純物 / 鉱物 / 有機物
研究実績の概要

氷河の表面アルベド(反射率)は、氷河表面に存在する鉱物や黒色炭素等の不純物によって値が下がり、日射を吸収しやすくなる。さらに、氷河消耗域では、氷が日射の吸収によって粒界などが融解し、氷が大きな雪粒のような多孔質体(風化氷)となり、この風化氷のため光は散乱され、さらに不純物が氷粒によって隠されるために、アルベドが高くなる作用が働くと考えられる。しかし、これまで実際の氷河においてアルベドと不純物量、風化氷の三者の関係は観測されたことが無かった。
今年度と昨年度とられたデータを用い、アルベドに対し、鉱物量、有機物量、風化氷厚さがどのような相関関係であるかを解析したところ、鉱物量、有機物量は量が多いほどアルベドを下げる効果があるのに対し、風化氷は厚さが厚いほどアルベドが高くなることが確認された。
さらに、アルベドと3要素(鉱物量、有機物量、風化氷厚さ)の単回帰分析、アルベドを目的変数、3要素を説明変数とした重回帰分析を行うと、アルベドの違いは特に有機物量によって決定していることが明らかになった。
また鉱物量、有機物量の吸収係数を測定した透過率から求め、観測対象となっているポターニン氷河における鉱物量、有機物量の典型的な量を使い、単位面積当たりのそれぞれの吸収量を求めたところ、量的には鉱物量が圧倒的に多いが、有機物の吸収係数が大きく、鉱物の吸収係数が小さいため、放射の吸収量としては有機物が最も効いているという結果になった。上記の回帰分析結果を矛盾なく説明できる結果となり、観測対象としている氷河のアルベドに対する影響は有機物が最も大きいことがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ禍のため、最初の2年間観測に行けず、全く観測データをとることができなかったため、遅れ気味である。しかし、観測2年目の2023年度は様々な観測データを所得することができた。2022年度のデータから、対象とする氷河表面は鉱物量が重量的には多いことが明らかとなった。2023年度は氷河表面鉱物のソースを観察することができ、2024年度には鉱物ソースの全体の把握が可能となるデータを取得できる予定である。このデータを取得することによって氷河上に露出する鉱物量が把握できるようになる。また2023年度は鉱物、有機物の吸収係数を測定できるようになった。これにより、3大光吸収性不純物それぞれについて、アルベドを低下させる効果を量的に議論することが可能となった。

今後の研究の推進方策

2024年度は最終年度である。観測は3年目となり、アルベドと不純物の関係についてのデータをさらに取得し、それぞれの年の特徴と気象条件について明らかにすることが第一の目的である。
またこれまでの観測では、ブラックカーボンについては、取得したサンプル数が少なく、オーダーしか明らかになっていなかったが、アルベドとの関係についてブラックカーボンの量的な効果を明らかにするために、スペクトルアルベド測定の際はブラックカーボン用のサンプルを取得する計画でいる。これにより、課題タイトルの「三大光吸収性不純物」の3つ、鉱物、有機物、黒色炭素がそろい、アルベド低下に、どの不純物が量的に効いているのかを量的に明らかにすることができる。
さらには取得した不純物量の吸収係数等を用い、氷面におけるアルベドモデルを作成し、観測したスペクトルアルベド、各不純物の含有状態について解析する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Absorption properties by irregularly shaped particles with inclusions at visible and near-infrared wavelength regions2024

    • 著者名/発表者名
      Masuda Kazuhiko、Ishimoto Hiroshi、Tanikawa Tomonori、Stamnes Knut
    • 雑誌名

      Journal of Quantitative Spectroscopy and Radiative Transfer

      巻: 321 ページ: 108998~108998

    • DOI

      10.1016/j.jqsrt.2024.108998

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] モンゴル西部河川流量に対する氷河融解水の寄与2023

    • 著者名/発表者名
      Khalzan P, Sadyrov S, 坂井亜規子, 田中賢治, 藤田耕史
    • 学会等名
      雪氷研究大会
  • [学会発表] 風化氷作成実験II-単結晶氷を用いて-2023

    • 著者名/発表者名
      坂井亜規子, 荒川逸人, 安達聖, 八久保晶弘, 根本征樹, 鈴木紘一
    • 学会等名
      雪氷研究大会
  • [学会発表] モンゴル・アルタイ山脈,ポターニン氷河における氷厚探査及び表面測量2023

    • 著者名/発表者名
      砂子宗次朗, 坂井亜規子, Khalzan P, 佐藤洋太, 石田直也, 福井幸太郎, 藤田耕史
    • 学会等名
      雪氷研究大会

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公開日: 2024-12-25  

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