研究課題/領域番号 |
20H00201
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
河野 義生 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (20452683)
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研究分担者 |
新田 清文 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 研究員 (00596009)
尾原 幸治 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (00625486)
近藤 望 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特定研究員 (70824275)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高圧 / 非晶質構造 / ガラス / ケイ酸塩 |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度に開発した高精度のコリメーションスリットシステムと2台の検出器を備えた移動式回折計と、パリ-エジンバラ型高圧プレス装置を組み合わせることにより、高圧下その場におけるガラスのPDF(pair distribution function)測定の開発を推進した。本課題で開発した高精度コリメーションスリットシステムを用いることにより、高圧実験セルなどからのバックグラウンドの影響を無くし、高圧下その場において精確なガラスのPDF測定を行うことに成功した。さらに、SPring-8のBL37XUビームラインにおいて、KBミラーを用いたX線集光技術と組み合わせることにより、46 GPaの超高圧下その場におけるガラスのPDF測定に成功した。 本課題で開発した高圧下PDF測定システムを用い、さらにSPring-8のBL05XU、BL37XUビームラインにおける高強度の高エネルギーX線を活用することにより、これまでの高圧PDF測定研究よりも遥かに高いQ範囲(20 A-1)までの高圧下PDF測定に成功した。このような高Q範囲まで測定した高品質の実験データを用いることにより、これまでの高圧研究では行うことができなかった詳細なガラスの構造の解析が可能になった。ケイ酸塩マグマのアナログ物質として最も単純な系であるSiO2ガラスについて、高圧その場環境下におけるSiO2ガラスの構造因子を高精度で測定し、逆モンテカルロ解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせた解析を行った結果、高圧下におけるSiO2ガラスの構造変化の詳細な解析に成功した。その結果、これまで理論研究において予測されながら実験的には捉えられていなかったSiO2ガラスの圧力下における異常圧縮挙動の構造的起源の実験的証拠を捉えることに成功した。この研究成果については2021年度中に論文を執筆・投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度において、高精度のコリメーションスリットシステムの設計とそれを組み合わせた多連検出器用回折計システムを開発した。そして、2021年度において、新しく開発した回折計システムとパリーエジンバラ型高圧プレス装置を組み合わせることにより、高圧下その場におけるガラスのPDF測定の開発を行い、これまでの高圧PDF測定研究よりも遥かに高いQ範囲(20 A-1)までの高圧下その場PDF測定に成功した。この開発により、1気圧下でのPDF測定研究と同等の詳細な非晶質構造の解析を、高圧下その場で測定したデータについて行うことに成功し、高圧下における非晶質物質の構造変化の詳細を議論することが可能になった。本研究で新しく開発した実験システムを用い、ケイ酸塩マグマのアナログ物質として最も単純な系であるSiO2ガラスにおいて高圧下構造測定研究を行った。高圧その場環境下において高精度で測定したSiO2ガラスの構造因子結果を用い、逆モンテカルロ解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせた解析を行った結果、これまで理論研究において予測されながら実験的には捉えられていなかったSiO2ガラスの圧力下における異常圧縮挙動の構造的起源の実験的証拠を捉えることに成功した。この研究成果については2021年度中に論文を執筆・投稿し、2022年4月に高インパクトファクター雑誌であるNature Communications誌(インパクトファクター:14.9)に受理されている。 また、2020年度にケイ酸塩メルトのアナログ物質であるSiO2ガラスの超高圧下における構造変化についての論文を高インパクトファクター雑誌であるPhysical Review Letters(インパクトファクター:8.4)に出版した成果について、2021年度において、2件の招待講演を受けるなど、本研究の成果について高い評価を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究により、高圧下その場におけるケイ酸塩ガラスの構造測定をSPring-8のBL37XU、BL05XUビームラインにおいて行うことに成功した。特に、BL37XUビームラインのKBミラーシステムを用いたX線集光技術を活用することにより、マントル深部の超高圧下におけるSiO2ガラスのPDF測定に成功した。2022年度は、この開発した実験システムを用いた高圧下におけるケイ酸塩ガラスの構造測定実験を行うとともに、逆モンテカルロ解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせた解析を適用することにより、高圧下におけるケイ酸塩ガラスの詳細な構造解析研究を推進する。本研究において開発した高圧下PDF測定システムを用いることにより、これまでの高圧研究よりも遥かに高いQ範囲までのX線構造因子測定に成功しており、これまでの高圧研究では行うことができなかった詳細なガラスの構造の解析が可能になってきている。一気圧下におけるPDF測定研究においては、高Q範囲まで測定した高品質な実験データと、逆モンテカルロ解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせた解析により、詳細な非晶質構造解析の研究が進んでいる。このような一気圧下のPDF測定研究と同様の詳細な非晶質構造解析を高圧下その場で測定したデータについて行うため、2022年度より分子動力学シミュレーションを専門とする則竹史哉博士を研究分担者に追加している。SPring-8のBL37XU、BL05XUビームラインにおいて、高圧下その場で測定したケイ酸塩ガラスの構造因子データについて、逆モンテカルロ解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせたケイ酸塩ガラスの詳細構造解析を行うことにより、高圧下その場におけるケイ酸塩ガラスの構造変化についての研究を推進する。
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