研究課題/領域番号 |
20H00206
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
榎本 浩之 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 教授 (00213562)
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研究分担者 |
谷川 朋範 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (20509989)
舘山 一孝 北見工業大学, 工学部, 准教授 (30374789)
中村 和樹 日本大学, 工学部, 准教授 (60435500)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 海氷 / マイクロ波 / リモートセンシング / 極域 |
研究実績の概要 |
・北極海において、8月から10月にかけてロシア砕氷船アカデミック・トリョーシニコフに乗船し,ロシア側北極海(ラプテフ海~東シベリア海)において現地海氷観測(マイクロ波放射計(PMR),目視,氷上)データと衛星観測(AMSR2,SIRAL,MIRAS)データと比較して海氷の種類,厚さの推定を行なった. ・2年目の海氷成長実験水槽を用いた海氷生成・融解実験を12月から3月にかけて行い,海氷厚の増加に伴う海氷と海水の温度・塩分の変化と,それに伴うマイクロ波輝度温度・赤外温度の変化を測定し,結氷期の海氷厚推定式の開発を行なった. ・2月に北海道東部のサロマ湖の湖氷上や北海道知床半島のウトロで、海岸に定着する海氷上で回転翼ドローンを用いた広域海氷厚観測を行い,氷上での雪厚・海氷厚の実測結果や流氷レーダ画像と比較を行なった. ・海氷表面のラフネスがマイクロ波値億世に与える影響については、これまで表面相関関数を現地調査に基づいて決定した例はほとんど無いことから、北海道サロマ湖を薄い一年氷の熱的成長を観測するためのテストサイトと設定し、櫛形ラフネス計により氷表面ラフネスを現地計測した。北海道サロマ湖で結氷した湖氷において氷厚およびこれに関連する海氷表面における塩分量およびラフネスを主とした現地調査を実施した。 ・欧州宇宙機関のSentinel-1の衛星観測に同期したサロマ湖の湖氷上の測定点において、積雪深、氷厚、海氷の水上部分の高さフリーボード、氷表面の塩分の測定を、古面上に展開した全28測点において実施した。 ・海氷表上のの積雪に対して、大気ー積雪・海氷系の放射伝達モデルをもとに,海洋モデルの特に海氷放射スキームの高度化を行った.また上記放射伝達モデルをマイクロ波領域に拡張し,海氷のマイクロ波放射伝達モデルの開発に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、実験プールに居置ける人工海氷実験と海外の船舶を利用した観測の実施を行うことを計画している。国内における海氷実験は、順調に実験実績とデータ解析が行われている。いっっ峰海外での船舶観測はコロナ感染拡大防止のための処置などで、活動が制限されており、研究の進捗に遅れが生じている。 また、北海道サロマ湖で結氷した湖氷において氷厚およびこれに関連する海氷表面における塩分量およびラフネスを主とした現地調査を実施したが、爆弾低気圧の接近に伴う荒天のため、現地調査と同期したUAVによるマルチスペクトル観測は中止を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進に向けて、北極海での砕氷船による現地海氷観測データの利用と国内置ける海氷成長実験水槽の実施及び、サロマ湖での現地観測をとおして、下記のような点に重点を置いた研究を行う予定である。 ①季節変動の影響考慮と海氷密接度算出の精緻化:前年度北極海で実施された海氷上のブイ観測から得られた海氷・気象・海象情報をもとに,季節変動による海氷厚・積雪深推定への影響を解析し,客観解析データを用いてパラメータ化する.実験プール観測時に,PMRの視野内における薄氷・厚氷の面積比変化,海氷上の積雪を変えながらマイクロ波放射計(PMR)観測を行う.この観測データを海氷分類アルゴリズムに入力し,出力される混合比の精度評価を行い,海氷密接度算出の精緻化を図る.北極海での砕氷船にょる海氷観測については、さらに新たな観測申請を行い実現を目指す。これにより自然条件化の多様なかいひゅ状況の実態に関する情報が集積される。 ② 合成開口レーダ(SAR),PMRの統合観測による空間分解能の向上および電磁波反射の検討:海氷密接度の高精度化を図るために,MMRと同じマイクロ波センサでありながら光学センサと同等の数~数10 m程度の空間分解能が得られるSARの有効性を確認する. このとき、海氷の表面のラフネスによる影響を補正した輝度温度から海氷密接度を算出することにより,ラフネスによる輝度温度の不確定性を評価する.北海道サロマ湖で結氷した湖氷において氷厚およびこれに関連する海氷表面における塩分量およびラフネスを主とした現地調査を進める。Sentinel-1の観測に同期した湖表面の前28か所の測定点において、今年度の観測から積雪深、氷厚、フリーボード、氷表面塩分の測定結果が得られたが、氷表面ラフネスについてはこれから解析に着手する。
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