研究課題/領域番号 |
20H00209
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
高井 研 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門, 部門長 (80359166)
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研究分担者 |
渋谷 岳造 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 主任研究員 (00512906)
藤島 皓介 東京工業大学, 地球生命研究所, 准教授 (00776411)
北台 紀夫 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 副主任研究員 (80625723)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生命の起源 / 化学進化 / 液体・超臨界二酸化炭素 / 深海熱水 / 相分配 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き2021年度には、実験室内海水ー液体・超臨界二酸化炭素系における揮発成分や金属塩・リン酸塩といった生体無機材料、あるいはアミノ酸やヌクレオシド、有機酸といった生体高分子材料、の溶解度や分配挙動を網羅的に検証するとともに、生体有機材料生成の化学反応特性を明らかにした。2021年度には特に、超臨界二酸化炭素とモリブデン硫化物、H2ガス、硫化水素を含むNaCl水溶液の反応系(200℃、数日間)において、大量のギ酸と収率数十%レベル(H2S換算)でメタンチオールの生成が確認された。これらの生成物は、H2ガス或いはモリブデン硫化物を除いた条件では検出されなかったため、超臨界二酸化炭素と海水あるいは熱水の反応により、生体エネルギー通貨かつタンパク質・脂質といった高分子有機物の材料となるメタンチオールが生成されることが明らかとなった。また2021年度には、海水ー堆積物ー液体・超臨界二酸化炭素系の実験を進め、堆積物中の鉱物の溶解が液体・超臨界二酸化炭素によって促進され、液体・超臨界二酸化炭素に分配されることはないものの接する海水側に多くの金属塩を溶出させる効果があることを明らかにした。さらに2021年度には、理論的考察と地質学的記録の解釈に基づき、冥王代・太古代の深海熱水域に現世よりも遙かに多くの液体・超臨界二酸化炭素プールに存在したことを体系化し、そこで生命の誕生を準備する化学進化が起きたする「生命誕生の場=深海熱水」説の弱点を補償する「液体・超臨界二酸化炭素化学進化モデル」の提唱論文を投稿した。 一方、2021年度に計画していた沖縄トラフ深海熱水域液体・超臨界二酸化炭素プールの調査が中止となった。計画変更を行い、現場で液体・超臨界二酸化炭素に溶存する揮発性成分や有機物を分析可能な現場ラマン分析と液体・超臨界二酸化炭素流体圧力保持採取装置の改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、2021年度に予定された冥王代・太古代深海熱水液体・超臨界二酸化炭素プール環境のモダンアナログである沖縄トラフ深海熱水域液体・超臨界二酸化炭素プール調査が中止ととなった。そのため予定していた冥王代・太古代深海熱水熱水液体・超臨界二酸化炭素プール環境のモダンアナログである天然深海熱水熱水液体・超臨界二酸化炭素プール環境に存在する揮発成分や金属塩、有機物の分析は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更を行い、2020年度と2021年度にかけて、現場で液体・超臨界二酸化炭素に溶存する揮発性成分や有機物を分析可能な現場ラマン分析と液体・超臨界二酸化炭素流体圧力保持採取装置の開発を完了した。2022年度の後半に予定されているマリアナ弧深海熱水域液体・超臨界二酸化炭素プール現場調査において、これらの現場ラマン分析と液体・超臨界二酸化炭素流体圧力保持採取装置を用いた天然深海熱水液体・超臨界二酸化炭素プールに存在する揮発成分や金属塩、有機物の分析を行う予定である。実験室内液体・超臨界二酸化炭素再現実験は計画に変更はない。
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