研究課題/領域番号 |
20H00214
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福澤 健二 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60324448)
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研究分担者 |
伊藤 伸太郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50377826)
東 直輝 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50823283)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノトライボロジー / MEMS / ナノすきま潤滑 / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
材料・加工技術の進歩による摺動面(軸受け面などのこすれ合いながら動く面)の高精度化は,より微小な摺動すきまでの流体潤滑を可能とし機械性能を革新してきた.材料・加工技術の進歩に対応して,摺動すきまはμmからnmオーダへと微小化が要請されていたが,微小すきまゆえに計測は困難で,ナノすきま潤滑技術は確立されていない.潤滑液体(潤滑剤)の特性はすきまに強く依存するため,すきまを精密に規定した摺動計測が必須であり,それにはナノすきまを介した平行な摺動面が平行に相対運動する摺動計測系が求められる.しかし,ナノすきまでの実現は困難であった.本研究では,マイクロマシン技術を用いて摺動部・アクチュエータを集積化した平行平面摺動系を構築する.これを用い摺動時の力計測に加えすきま分布と潤滑液体の流れ場も計測可能な,すきまを精密に規定した潤滑計測法を確立し,ナノすきまでのせん断流れの発生と圧力(動圧)の発生という流体潤滑の素過程を解明し,ナノすきま流体潤滑の基盤を構築することを目的としている. 今年度は,しゅう動部・アクチュエータを集積化した平行平面摺動系を実現する集積化潤滑計測デバイスの設計と作製法の開発を行った.摺動により潤滑剤が発生する力が検出可能となるように,デバイス構造を設計した.さらに,シリコン基板を用いてデバイス構造を具現化する作製法,対向してナノすきま摺動面を形成するガラス板および流路を封止するガラス板の加工法も検討し,おおむね形成が可能であることおよび課題を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究構想の中核は,一様なナノすきま摺動計測を実現するための平行平板摺動系を構成する摺動部・駆動部を集積した集積化潤滑計測デバイスである.本年度は,デバイスの設計と具現化するための作製法を検討し,当初の研究計画どおり,シリコン基板を用いて摺動部・駆動部を集積したデバイスの設計とそれを具現化する作製法,対向してナノすきま摺動面を形成するガラス板の加工法,および流路を封止するガラス板の加工法も検討し,おおむね形成が可能であること,および課題を見出したため.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度着手した集積化潤滑計測デバイスの作製法の確立とエリプソメトリー顕微鏡によるすきま計測法の確立を図る.それぞれの研究項目を以下のように進める. ・マイクロマシン技術を用いた集積化潤滑計測デバイスの構築 マイクロ流路としゅう動面段差については,当初,ガラスエッチング板へのエッチングを計画していたが,実施したガラスエッチングの試みにより,エッチレートが低い,表面粗さが劣化するなどの問題が生ずることが分かったため,より加工の容易なシリコン基板のエッチングを検討する.この作製法を基本として,集積化潤滑計測デバイスの改良も検討する.また,接着剤を用いずに,ガラス板とシリコン基板の直接接合を可能とする,陽極接合法を用いたガラス板とシリコン基板の接合を試みる.さらに,これに,流路封止用のガラス板を接着し,集積化潤滑計測デバイスの作製法の確立を図る. ・エリプソメトリー顕微鏡によるナノ摺動すきま計測 試料に光を照射し,反射光の偏光状態の変化からすきまを得るエリプソメトリーに基づいたエリプソメトリー顕微鏡で,集積化潤滑計測デバイスの摺動面のナノすきま計測法の確立を図る.すきま分布を輝度に変換し明暗像として得ることで,すきま分布をリアルタイムに得る.レンズの後側焦点面上の光軸からずれた点に照明光を集光し,試料面を斜めかつ平行に照明するという光学系により,ナノすきまのリアルタイム可視化を試みる.
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