研究課題/領域番号 |
20H00217
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
高木 知弘 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 教授 (50294260)
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研究分担者 |
青木 尊之 東京工業大学, 学術国際情報センター, 教授 (00184036)
大野 宗一 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30431331)
安田 秀幸 京都大学, 工学研究科, 教授 (60239762)
坂根 慎治 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 助教 (70876755)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フェーズフィールド法 / 高性能計算 / データ同化 / その場観察 / 凝固組織 |
研究実績の概要 |
フェーズフィールド法によるデンドライト凝固の大規模高速計算を可能とするために,固液界面近傍にのみ細かい格子を用いる適合細分化格子法(AMR)の複数GPU実装を行った.ここで,各GPUの計算負荷を均一化するために動的負荷分散を適用した.また,大きな格子を用いた計算を可能とするために,プリコンディショニングを導入した.このAMR技術開発によって,一次枝間隔の広いデンドライト成長問題も効率的に計算可能となった. ダブルオブスタクルポテンシャルを用いたマルチフェーズフィールド法と二緩和時間モデルを用いた格子ボルツマン法を連成させることで,固液共存域変形のシミュレーションを可能とした.また,このモデルの複数GPU実装を行い,大規模シミュレーションを可能とした.さらに,これを用いた様々な固液共存域のせん断変形シミュレーションを系統的に行い,粒形状,固相率,変形速度などが固液共存域変形挙動に及ぼす影響を詳細に評価した. GPUスパコンを用いた大規模フェーズフィールド計算によって,優先成長方向が熱流方向から傾いた柱状デンドライトの一方向凝固計算を系統的に行い,その配列を評価した.この結果,傾いたデンドライトでも六角形配列が支配的となることを明らかにした.この結果を用いて,デンドライト樹間液相流動の透過率評価を行い,無次元透過率はおおむねKozeny-Carmanの式によって表現可能であることを示した. 一方向凝固時に成長する柱状デンドライトのデータ同化を効率化するために,デンドライト先端近傍のみを用いるデータ同化を考案し実装した.また,液相流動と固体運動を伴う単一デンドライト成長問題に対するデータ同化システムを開発し,双子実験によってその妥当性を確認した.さらに,多結晶粒成長において多数粒界のエネルギーとモビリティを同時推定可能なデータ同化システムを開発し,双子実験を通してその有用性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
凝固組織予測の先進的シミュレータの開発においては,適合細分化格子法(AMR)の複数GPU実装を完了し,現在,液相流動と固体運動を伴うデンドライト凝固問題への適用を図っている.また,固液共存域変形の大規模シミュレーションを可能とし,系統的な固液共存域に対するせん断変形シミュレーションを行った.加えて,GPUスパコンによる大規模フェーズフィールドシミュレーションによって,傾いた柱状デンドライトの配列挙動評価およびデンドライト樹間液相流動の透過率評価も実施した.このように,凝固組織予測の先進的シミュレータの開発は大いに進展している.
シミュレーションと実験を一体化させる手法開発においては,合金の一方向凝固時に成長する柱状デンドライトのデータ同化を効率化するための手法を開発し,基礎となるプログラムを作成した.また,液相流動と固体運動を伴うデンドライト成長のデータ同化を可能とした.さらに,多結晶粒成長において多数の結晶粒界における粒界エネルギーとモビリティを同時推定可能なデータ同化を開発し,双子実験によってその有用性を確認した.また,SPring-8においてその場観察を実施し,実験をフェーズフィールド法に組み込むための適切な凝固条件を探索した.
以上のように,凝固組織予測の先進的シミュレータ開発と,計算と実験の一体化を目指す本研究目的に対して着実に研究を進めることができている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度であり,3次元データ同化を可能とするAMR複数GPU並列化を実装したデータ同化を可能とする.そして,SPring-8によるその場観察実験を実際に取り込み,計算と実験を一体化する.また,固液共存域変形,デンドライト樹間液相流動の系統的評価によってこれらの現象解明を推し進める.
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