研究課題/領域番号 |
20H00220
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸山 茂夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90209700)
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研究分担者 |
末永 和知 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 首席研究員 (00357253)
千足 昇平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50434022)
項 栄 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20740096)
井ノ上 泰輝 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00748949)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / ヘテロナノチューブ / 遷移金属ダイカルゴゲナイト / 高分解能電子顕微鏡 / 分光計測 / エネルギーデバイス応用 |
研究実績の概要 |
単層カーボンナノチューブ(単層CNT)をテンプレートとしその外周に異なるナノチューブ(例えば窒化ホウ素ナノチューブ(BN-NT)や二硫化モリブデン-ナノチューブ(MoS2-NT))を形成することによって得られるヘテロナノチューブの合成術の開発,その物性評価およびデバイス応用に向けた研究進めた. 合成おいては,多数の金属触媒微粒子を表面に担持したゼオライト表面から合成した単層CNTを用いて,単層CNTを内層,BN-NTを外層とする単層CNT@BN-NT構造の合成に成功し,その光学特性を明らかにした.また,ヘテロナノチューブ成長メカニズム解明を目指し,グラファイト表面での結晶の成長を詳細に分析することで,非常に大きな/グラファイト構造の合成に成功した. 物性評価においては,垂直配向した単層CNT膜の膜厚方向の熱伝導の計測に加え,単層CNT@BN-NT薄膜が単層CNT薄膜よりも高い面内熱伝導率を示すことを明らかにした.また,光学特性評価も行い,単層CNT@BN-NT@MoS2-NTにおける励起子のダイナミクスを緩和分光計測により明らかにした. 応用研究においては,単層CNT@BN-NT@MoS2-NTをチャンネルとした電界効果トランジスタの作製に成功し,そのデバイス特性評価を行った.ヘテロナノチューブのエネルギーデバイス応用に向け,単層CNTのペロブスカイト型太陽電池への応用を行った.電極として単層CNTを利用することで,正孔輸送層としての優れた性能を明らかに,ペロブスカイト結晶の成長核としての単層CNT応用,単層CNT@MoS2-NT薄膜における高い正孔輸送特性を示すことに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単層CNT薄膜に対しヘテロナノチューブを合成することで,ヘテロナノチューブ構造を形成していたが,薄膜構造であること,サイズがマクロスケールであるから様々な物性計測が可能である.このことを利用し,本年度では熱,電気,光学特性などデバイス応用に向け非常に重要な物性の評価を行い,予想以上に学術的に興味深い特性を明らかにすることに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
単層CNTやBN-NT,MoS2-NT等を組み合わせたヘテロナノチューブの合成,特に結晶性や層数制御,被覆率等に着目し合成技術を向上させていくと同時にその成長メカニズムの解明を目指す.さらに,他の原子層状物質(WS2,NbS2)の合成およびそのヘテロナノチューブ化技術の開発を進める.これまで数多くの原子層状物質の合成が報告されているが,その多くが金属基板表面やSiO2基板表面にて行われたものである.ヘテロナノチューブ構造を得るには,他のナノチューブをテンプレートとしその表面に合成する必要があり,一般的な原子層状物質の合成条件とは異なる.最適なヘテロナノチューブ合成条件を探索し,より高度な構造制御技術確立を目指す. 物性分析・構造解析においては,超高分解能電子顕微鏡観察や分光計測,電気伝導計測などを多角的に用いることで,より詳細なヘテロナノチューブの構造の解明を目指していく.ヘテロナノチューブのキラリティ(右巻き,左巻き),スタック構造など物性とその構造との関係に注目し解析を行う. 特にデバイス応用に向けては,その集積化技術を中心に研究を進める.複数のヘテロナノチューブデバイス作製には,効率よくヘテロナノチューブを合成,デバイス用基板に配置することが必要不可欠であり,これらに関係する技術開発を行う.
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