研究課題/領域番号 |
20H00225
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
後藤 俊幸 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 訪問教授 (70162154)
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研究分担者 |
渡邊 威 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30345946)
三浦 英昭 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (40280599)
小林 宏充 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (60317336)
島 伸一郎 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 准教授 (70415983)
齋藤 泉 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70798602)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 雲乱流 / 雲水混合率揺らぎ / 分散スペクトル / ダムケラ数 / ランジュバンモデル |
研究実績の概要 |
・雲中で観測される雲水混合比揺らぎのスペクトルは従来の乱流理論とは異なることが報告されている.これを解明するため,水と水蒸気間の相変化を伴うスカラー(雲水混合比に相当)を付随した粒子を乱流中に分散させ大規模シミュレーションを行った.また,相変化の特性時間を取り込んでスペクトルの理論を新たに構築した.両者によるスペクトルは定性的に一致し,スカラー分散スペクトルのべき指数はダムケラ数(Da=乱流のコルモゴロフ時間/スカラーの相変化の特性時間)の減少とともに小さくなることがわかった. ・雲粒子などの粒子が如何に乱流運動や熱輸送に影響を与えるかを,理論および雲マイクロ物理シミュレータ(CMS)で解析した.重力沈降により雲粒子半径に比例する終端速度で落下する場合には,雲粒径分布関数はミシガン大における室内実験の結果と一致することが分かった.また,乱流中の微小粒子による乱流変調について解析し,乱流熱輸送がダムケラ数の増大とともに減少することを見出し,シミュレーションにより検証したところよい一致を見た. ・一様な平均スカラー勾配下の乱流スカラーを大規模シミュレーションにより解析した.分散スペクトルをルジャンドル展開し,0次(等方成分)に対する2次(非等方成分)の相対的強度がシュミット数(Sc=分子粘性/分子拡散)の減少とともに増大することが分かった. ・雲乱流中を輸送される雲粒子の初期成長は雲粒子が経験する過飽和度揺らぎの履歴に大きく影響される.雲粒子の軌跡に沿った水蒸気過飽和度のランジュバンモデルを構築し,平均半径とその揺らぎ分散に対する理論を構築し,CMSによるシミュレーション結果と比較しよい一致を見た.また,超水滴法などでの応用を念頭に,より単純化したモデルを開発した.さらには,超水滴法を氷晶を含む場合にまで拡張し,雲中での氷晶成長のシミュレーションを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)雲水混合比揺らぎの分散スペクトルが従来の乱流理論とは異なる領域で見出されることの理論的説明がなされ,米国物理学会(APS)でのミニシンポジウム(online)で招待講演として発表されたこと,(2)乱流中における微小粒子の熱的応答とそれによる乱流変調についての現象論的説明がなされたことおよび雲マイクロ物理シミュレータ(CMS)を応用したシミュレーションによりこれを検証しその成果が論文として投稿されていること,またAPSで発表されたこと,(3)雲粒子成長における過飽和度揺らぎの影響を記述するランジュバンモデルを構築し,CMSによりこれを検証し,その成果が論文として投稿されていること (4)超水滴法での拡張が進展しており、これに関する国際セミナーも行われていることなどから研究は順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
・エアロゾル数密度が大きい場合でも計算できるようCMSの改良を引き続き行う.雲粒子動力学の計算部分と流体の計算部分(特に3次元FFT)における並列計算プロセス・演算コアの最適配置、計算ノードのトポロジーの最適配置などを変えて高速化を図る. ・エアロゾル数密度やエアロゾル粒径分布を変化させCMS計算を行い,MTUのShaw教授らの実験と比較して雲粒子生成機構の詳細な解析を行う.同時に,雲粒子数密度を増大させて,雲粒径分布関数の変化を解析する. ・高レイノルズ数の乱流混合シミュレーションを実行し,速度,変形速度テンソル,運動エネルギーおよびスカラー分散の散逸率のモーメントや確率密度関数のレイノルズ数依存性を調べる. ・雲粒子による雲水混合比揺らぎのスペクトル変調理論を構築し、雲乱流場の大規模シミュレーションによりこの検証を行う ・雲乱流DNSにより得られた場から乱流モデリングのための粗視化データを生成し,数理モデルと比較してモデルの改良を行う.特に,ラグランジュ的視点に立って,速度,変形速度テンソル,過飽和度の2時刻相関関数の数理モデルが如何に切断波数に依存するかを解析する. ・雲中の小さい領域を対象にして、温度・過飽和度・速度などのLESモデルを組み込んだ超水滴法による雲乱流計算とDNSによる計算結果を比較しながら、超水滴法計算手法の高精度化を行う.
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