研究課題/領域番号 |
20H00226
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲葉 雅幸 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (50184726)
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研究分担者 |
小島 邦生 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (50839131)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環境認識適応行動 / 移動作業操作行動 / 多態変形変身 / 自己身体推定 / 全身行動制御 / トランスフォーム / 多態推進操作機構 / 移動作業ロボット |
研究実績の概要 |
本年度は,交付申請書に示した研究計画調書での各研究項目の中の以下の項目のそれぞれを行った. (A) 多態推進操作機構と全身の機構配置表現の構築: 人型と四輪形態とを変身可能な形態での車輪配置と行動比較を行う.移動時に物体操作を可能とする車輪配置構成を比較実装した.信号と電力も脱着して吸着力をもつ小型磁石分散配置脱着機構を試作し,脱着交換機能によって身体構成をロボット操作によって可能なシステムの構成法を確認することが可能となった.(C) 作業時の揺動推定と体勢維持制御: 加速度・角速度・力センサをもつモジュールを身体要素の接合部に配置し,視覚認識情報と関節トルク情報と合わせて各種推定処理と行動計画制御を行うシステムを実現した.(D) 道具利用環境操作作業の認識行動操縦制御: 1自由度把持グリッパにより操作できる,ピンセット型道具セットを構成し,各多態推進変形ロボットを作業側だけでなく,操縦側デバイスとして利用し,道具操作方法を動作計画プログラム,人の操縦データ教示利用,模倣学習行動などの方法により進めるための環境を構築した.(E) 環境適合の移動形態と作業形態との形態変換と全身の分解組立手順生成: 防水用全身被覆法として溶融ワックスの積層法を考え,被覆厚調整と関節固化防止法を実験を通して獲得するシステムを実現し,水中環境での行動評価を行った.磁力脱着機構・ワックス被膜の脱着機構を備えたことで,身体の形態変換の多様性は各段に上ることとなり,身体要素が変化するロボットの形態変換は,行動の手順生成だけでなく,身体要素の脱着可能性に基づく分解組立手順生成法を必要とすることとなり,実ロボットによる動作手順の生成,組立対象の配置,部品組み付け,手順生成,組み付け動作制御の基盤システムの基礎を構築してきている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は,地上,水中,空中を行動可能なロボットを多様な構成法をテーマに必要な道具立てを開発しながら,将来の新しい知能ロボット研究進化教育基盤環境の設計と実装を行っているものであり,その環境を学部生,修士論文,博士論文生らの研究基盤として利用可能となるように評価を行いながら進め順調に進んできている.多数の関節自由度をもった多種類のロボットと水陸空と多様な環境での実験を短期間に進められるように,ロボット駆動要素は市販の小型モジュールを利用し,制御ボード,センサボードをその小型モジュールに合わせて新規開発して進めている.各モジュールにより,等身大の大型ロボットと同等あるいはそれ以上のセンシング機能を搭載し,実験で故障破損しても交換が容易な体制が整い,短期間に学生らの様々な応用行動研究が可能となっている.その中では,2脚2腕ロボットが膝に駆動二輪,腕に受動2輪をもち,段差の2足歩行と平地4輪高速移動を行うロボットを実現し,水中では通常の2脚2腕ロボットを防水化し,水面に浮遊できるような浮遊体を背中に装着することで,水面近くにおいてバタ足やバタフライ動作により目標対象物を目で見つけて泳ぎ,水底での立作業動作を行い,空中環境でも,2個のロータを独立ピッチ制御することで地上の歩行,高台へ飛びたち,人発見挨拶行動,ドア開け,把持物収納行動まで視覚に基づく行動として実現してきており,ヒューマノイドが水中,空中飛行可能としたという研究成果となっており,国際会議でも高い評価を得ている.今年度は,防水加工として全身を一律ワックスで被覆し溶かすことで被覆を脱着させることが可能な環境と,体内分散配線を脱着可能なコネクタ基板化することで身体要素モジュールの脱着機能を導入した.これらにより多態変形機構型知能ロボットの構成法が大きく進展することとなった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度,当初の研究計画の段階では具体的な実現方法が見えてはいなかった成果として,ロボットの全身の防水方法と,身体要素を必要に応じて脱着交換可能とする接続部の構成法に関する新しい試行と評価を得ることができた.これは,当初より模索を行ってきていたが,今年度その具体的な方法として,全身の防水被覆の新しい方法としてワックスの融解による方法と,モジュール要素間の配線機構を含めた脱着機構の実現法を新たに成果として加えることが可能となった.これにより多環境対応性と作業目的に応じたロボット身体の形態機能可変性の与え方をテーマとする本研究での研究手法の多様性が飛躍的に拡張することとなった.脱着交換ができない場合には全ての要素がそれを必要としない環境での行動においても邪魔にならない形となる必要がある.それが要素の脱着機能と目的環境行動に対して必要な要素機能を判定し作業行動場所ごとに必要な要素機能を必要に応じて運搬する形態となって,作業に応じての要素機能の脱着交換と,交換後に全体システムの管理制御が可能となるシステムが必要となる.これまでモジュールで構成していた全身をどの接合部で脱着交換可能とするか,その脱着面での様々な組み合わせ可能な身体要素に対して形態再構成をどのように行うかという機能には,身体の組立分解機能と行動生成機能を統合したソフトウェアシステムが必要となる.今後,その基盤システムの構築を実ロボットにおいて評価しつつ研究計画にそって本研究の総括を進めてゆく.
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