研究課題/領域番号 |
20H00234
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒田 忠広 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50327681)
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研究分担者 |
石黒 仁揮 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (80433738)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | RFID / 無線タグ / オンチップアンテナ / IoT / Society 5.0 / リーダ |
研究実績の概要 |
本年度は複数の無線タグの信号の衝突の問題を回避するシステムの研究を行うとともに自家中毒を低減する機能を搭載したリーダの試作による実証を行った。 通信距離の拡大により、通信可能な範囲内にある無線タグの数が増えると、複数の無線タグが同時にリーダに反応することになり、リーダはその情報を正しく受け取ることができない。つまり通信の多重化が必要となる。多重化の方法には、周波数分割、時分割、コード分割の3通りが考えられるが、複雑な多重化方式の採用が可能な携帯電話やスマートフォンとは異なり、無線タグに搭載する機能を可能な限り絞り込むことで小型化低コスト化を実現するため、我々は最も実装が簡素になる、時分割方式を用いることとした。時分割方式では、通信する時間帯を端末毎に割り当てることで、同時間帯の通信を避けて信号の衝突を防止する。本研究では、無線タグがそれぞれに有するIDをベースにスロットを割り当てることとした。無線タグが有するIDに同じものは2つとない。よって必ず異なるタイムスロットに割り当てることが原理的に可能であるのだが、それでは必要なインターバルが長くなりすぎるため、非常に低い確率での衝突を許容しつつ、インターバルを2秒程度と短くする方式を考案した。タグ自らがユニークなIDをベースに計算したタイムスロットで通信を行うことで、信号の衝突を避けることが可能となる。今年度は、信号衝突回避機能を搭載した無線タグのテストチップを試作し、衝突回避が可能であることを実験的にしめした。その成果は、半導体集積回路のトップ国際会議の1つである。Asian Solid-State Circuits Conferenceに採択され、11月に発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応募時に計画した第2年度の計画である「複数の無線タグの同時読出をする際の信号の衝突の問題を回避するシステムの研究を行う。同時にスマート化したリーダの試作による実証を行う」に関して、複数の無線タグがリーダに反応するタイミングを自ら計算し他の無線タグと異なるタイミングで反応するようにする現実的なアルゴリズムを考案するとともに、チップの実装し、実験的に動作を確認することができた。また論理回路の低電力化についても、従来にない新しい回路方式をチップに実装し、その低消費電力化を実験的にしめした。 前年度の検討であきらかになった反射波によるリーダによる読出し動作の大きな課題になることについても、リーダ側で反射波をキャンセルするシステムを考案するとともに、実機に実装し、その基本動作を確認することで効果を実証した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、当初の予定通り、極小無線タグとスマート化したリーダを組合せたシステムの構築と実証を行うとともに、リーダにおける自家中毒を回避するシステムを追究する予定である。システム動作には、2021年度に東京大学において試作したRFIDチップを搭載した無線タグを用いる予定である。無線タグとリーダに関しては、それぞれ東京大学チームと慶應義塾大学チームが推進しているが、システム動作に関しては両者の協力が不可欠であり、コロナ禍ではあるが、引き続き連携を密にし、必要に応じて合同実験を行うなどして、研究を推進していく所存である。
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