本年度は、当初の予定通り、極小無線タグとスマート化したリーダを組合せたシステムの構築と実証を行い、リーダにおける自家中毒を回避するシステムを実装し検証した。加えて、極小無線タグについても、従来の回路構成を改善し、高速かつ低電力に動作可能であることを示した。 リーダシステムに関しては、送信波形の位相および振幅を制御して受信系にループバックし、タグ以外の物体からの不要反射波をキャンセルすることで受信系の利得飽和を回避するシステムを考案した。不要反射波をキャンセルするために開発した位相、振幅制御モジュールとソフトウェア無線機と組み合わせることで、不要反射波を別途検出する回路を搭載することなく、自家中毒を抑制するリーダシステムを開発した。また、受信フレームの複数回平均化によりS/N比の改善を図った。これらの技術を組み合わせることで、極小無線タグのID情報を8cmの距離で読み取ることが可能となった。同成果を53rd European Microwave Conference (EuMC2023)に投稿した。 極小無線タグについては、タグを断熱的に動作させるためのパワークロックの新たな波形成型回路を考案し、従来に比べて10倍の動作周波数で動作可能となることを示した。この波形成型回路は、従来のパワークロック生成回路が、高速動作時の立下りが遅いことに起因して理想的なクロック波形から離れ、無線タグ回路が動作しなくなることを防ぐものである。本回路を用いることで、無線タグ回路は従来よりも高速動作が可能となり、衝突回避のため時分割多重化したとしても、5秒程度で動作を完了することが可能となった。同成果は、29th IEEE International Conference on Electronics Circuits and Systems (ICECS 2022)に採択され、口頭発表を行った。
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