研究課題/領域番号 |
20H00244
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
河野 剛士 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70452216)
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研究分担者 |
沼野 利佳 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30462716)
鯉田 孝和 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 准教授 (10455222)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | センシングデバイス / 脳計測 |
研究実績の概要 |
米国、欧州、近年のアジア諸国も含め世界脳科学研究の拡大に伴い、脳計測デバイスが最重要技術のひとつとして取り上げられている。質の高い脳計測は刺入方電極が必然だが、既存電極は直径数十~数百μm以上と大きく、組織損傷を引き起こし、長期安定計測ができない。本研究では、申請者が開発した直径5 μm以下の世界最小プローブ技術を基軸にその脳内埋め込み応用への発展とし、デバイスの全フレキシブル化、薄膜化技術、無線(ワイヤレス)技術に取り組む。これにより既存技術では不可能であった長期安定的な脳計測が可能になり、学術的には脳メカニズム、生命システムの理解、さらには治療応用に貢献できる。また、今後の企業参入が予測される脳-コンピューターインターフェース技術を実現する脳インプラント(埋め込み)デバイス技術を開拓できる。 本研究目的を達成するため、2020年度は提案するプローブ電極デバイスの基板フレキシブル化プロセスの確立と動物実験による計測評価、脳組織の損傷評価を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、脳組織損傷を低減するために、マウスの脳内に埋め込むための刺入型プローブ電極を、薄膜かつ柔軟な基板上に形成する新規プロセス技術を新規確立した。 1.プロセス技術の確立:基材とするポリマー材料としては従来のSi基板ではなく、パリレン膜を用いた。Si結晶成長(VLS法)にてSi基板に長さ400 μm以上、先端直径5 μm以下のSiプローブを垂直形成し、これらのプローブに対しパリレンを10 μm以下の膜厚で均一に成膜、その後基板配線(材料Au)のパターニング後にパリレン膜を用いてプローブを基板から剥離するプロセスを確立した。 2. 多チャンネル化:この試作結果を踏まえ、プローブ極間は最小ピッチで100 μm、電極数においては4チャンネルから開始し、多チャンネル化および高密度アレイ化技術に目処を立てた。 3. マウス埋め込みによる組織損傷低減の確認:試作デバイスを用いたマウス大脳皮質体性感覚野(バレル野、S1B)からの急性計測評価を基にその後第一次視覚野(V1)への電極デバイスの埋め込みとその長期計測(数か月~年単位)を実施し、ニューロン信号計測の安定性を評価すると共に脳組織の損傷を評価し、その損傷の低減を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で提案する微細プローブは、記録面積の微小化に伴いインピーダンスが増大し、脳計測において信号電圧の減衰、さらに外来雑音の増大を引き起こす。この課題を解決するために、プローブ電極にフレキシブルアクティブフロントエンド(AFE)を搭載する。このようなプローブ電極へのAFE搭載は、汎用性回路との親和性を高め、将来的な計測システムの小型化、低コスト化につながる。 1. AFE設計:NMOSソースフォロワ構成とする。4チャンネルまでは個別のアンプ構成とし、~64チャンネルはマルチプレクサ(MUX)構成とする。低ノイズMOSFETも設計する。 2. プロセス技術の確立:薄膜Si基板へMOSFETを形成し、プローブ電極のフレキシブ基板(パリレン)に転写する。 3. フレキシブルトランジスタ:Si-MOSFET以外としてフレキシブルトランジスタを可能とする有機物半導体(PEDOT)や酸化物半導体(IGZO)を用いたAFEも試作する。Si-MOSFETと比較して、将来的な脳、さらには生体内埋め込みエレクトロニクスとしてのAFEの指針を示す。 また、動物の行動の制限やケーブル振動による雑音、感染の課題解決に向けた、提案デバイスの無線(ワイヤレス)化の検討も開始する。
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