研究課題/領域番号 |
20H00247
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
斗内 政吉 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (40207593)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ波バイオセンシング / テラヘルツ波バイオイメージング / ナノスケール光テラヘルツ交換 / がん細胞観測 |
研究実績の概要 |
テラヘルツ波バイオセンシングは、未開の重要研究分野であるが、波長限界(波長は約300μm)により高分解能イメージングが制限され、強度不足によりエネルギー密度が低く、高感度・微量検査に弱いという大きな障害がある。その弱点を克服するため、以下の項目に取り組んだ。 【項目1】”総合的局所場光テラヘルツ波変換の科学”については、局所場でのテラヘルツ波発生と伝搬を科学するため、単一ダイポールからのテラヘルツ波生と、アレー化した場合を理論的に比較し、位相差・アレー間距離・アレー間位相差がテラヘルツ波に及ぼす影響をシミュレーションした。その結果、フェーズアレー効果により、位相差により放射テラヘルツ波の指向性が大きく変化することが見いだされ、そのバイオセンサー応用のため、メタマテリアル構造における局所テラヘルツ発生を、センシングに利用する構造の検討を始めた。 【項目2】”細胞評価適合型テラヘルツ波イメージング装置の開発とバイオ・医用応用”については、昨年成功した早期乳癌(DCIS)の非染色イメージを改善するため、画像処理技術の改善を試みた。その結果、機会学習を導入することで、改善が可能であることを見出し、機械学習を取り入れたデータ処理を行うための基盤を構築した。 【項目3】”チップ増強テラヘルツ分光イメージングシステム開発”についていは、近接場高分解能イメージングに向けて、テラヘルツナノプローブシステム組み立てと高感度化に向けたテラヘルツ検出デバイスのナノ構造化を目指し、信号の高感度検出にに成功し、チップ増強テラヘルツ分光イメージングシステム開発の基盤が構築された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【項目1】については、ダイポールの単一・アレーに対するFDTDシミュレーションが終了し、メタマテリアル相互作用の検討を始めた。テラヘルツ波点光源との時間領域相互作用を検討することで、バイオセンサーの高感度化が期待される。具体的には、メタアトムからのテラヘルツ波発生の周辺メタマテリアルとの相互作用を理解することで、アレー構造の設計と実際のずれの原因追求へと繋がってきた。また分解能化のための固芯レンズの設計と装着技術の開発が進んでおり、想定以上の進展も得ている。 【項目2】については、機械学習を取り入れることで3次元的可視化に有効であることがわかってきた。更に様々なケーススタディーにより、大幅な高分解能化が期待される。これまでに、乳がんだけではなく、その他の癌の非染色観察の可能性を見出しており、染色後の癌細胞と比較検討を行っている。 【項目3】についていは、システム全体の構成を見直すことで、大幅なSN向上に成功した。また、微小検出器の組み込みにより、チップ増強テラヘルツ分光イメージングシステムによる高分解能イメージングの取得を実現可能となってきた。
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今後の研究の推進方策 |
テラヘルツ波バイオセンシングは、未開の重要研究分野であるが、波長限界(波長は約300μm)により高分解能イメージングが制限され、強度不足によりエネルギー密度が低く、高感度・微量検査に弱いという大きな障害がある。その弱点を克服するため、以下の項目に取り組んだ。 【項目1】”総合的局所場光テラヘルツ波変換の科学”については、アイデザイン構造などによる、マイクロ流路と局所場テラヘルツ励起の関係を明らかにし、高効率・コンパックとテラヘルツマイクロ流路構造へのフィードバックをはかる。その時間応答相互作用を理解することで、機会学習を用いた、高感度バイオチップの開発につなげる。 【項目2】”細胞評価適合型テラヘルツ波イメージング装置の開発とバイオ・医用応用”については、早期乳癌(DCIS)の中に存在するcomedo型乳がんイメージングなどの高分解能化を図るために、固芯レンズを用いたイメージングシステムの開発を試みる。これにより、分解能10μm以上の実現を目指し、システム開発とその実証に取り組む。また、画像処理技術に機会学習を導入することで、3次元イメージングの実現を試みる。 【項目3】”チップ増強テラヘルツ分光イメージングシステム開発”についていは、ほぼ完成したシステムの最適化を行い、高分解能テラヘルツ放射イメージング取得を実現するとともに、ダイナミックな電荷移動を観測する。そのため、対象となる構造体の開発も行う。
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