研究課題/領域番号 |
20H00253
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
加藤 和利 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (10563827)
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研究分担者 |
永妻 忠夫 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00452417)
硴塚 孝明 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 准教授 (20522345)
金谷 晴一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (40271077)
前田 辰郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究主幹 (40357984)
高畑 清人 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 准教授 (40780797)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ波発生 / 光電変換デバイス |
研究実績の概要 |
電子を自由空間で走行させる新規光電変換デバイスを産業技術総合研究所の高速電子デバイス製造ラインで作製するために、現行の製造設備の光電変換デバイスへの適否の確認を目的として、従来型光電変換デバイスである単一走行キャリヤフォトダイオードを作製した。ただし光入射方向は従来の横入射ではなく、本研究で目標としている面入射型としている。また光を面入射し反対面へ電波を放射する構造に特化した測定装置の設計と構築を行った。本測定装置に300GHz光周波数が離れた二光波を導入し、上記単一走行キャリヤフォトダイオードに入射した光波により発生した300GHzのテラヘルツ波の放射強度を測定した。フォトカレント6mAの光入射条件において測定された強度は6μWとなり、従来プロセスで作製した横入射型単一走行キャリヤフォトダイオードと同等以上の強度を得ることに成功した。 新規超高速光電変換デバイス作製に向けて、デバイス構造内での自由空間の形成を、半導体犠牲層上にアノード電極を形成したのちに犠牲層をエッチングで除去する手法を検討し、InGaAsフォトカソード上の1μm離れた空間にアノード電極を形成することに成功した。この光電変換デバイスに光を入射してフォトカレントを測定した結果、フォトカソードから電子が放出され空間を走行することを示唆する電圧―電流特性を得た。 今年度得られた上記結果は、学術論文5件(査読あり)、国際会議10件(査読あり)、その他国内学会(査読なし)で発表した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
テラヘルツ波強度を抜本的に増大し新たな産業分野の開拓の礎となる技術を確立に向けて、テラヘルツ波発生のためのフォトミキシングを行うフォトダイオードの性能限界が半導体の高い比誘電率に起因することに着目し、半導体デバイスの本質的な制限要因から脱却する方法として、光電子を半導体内ではなく自由空間を走行させる新たな原理のデバイスの研究開発に取り組んできた。 2020年度(初年度)は、電子走行をモデル化し計算機シミュレーションにより新規光電変換デバイスの性能予測を行った。その結果、300GHz動作において、従来の10倍以上の出力が得られる可能性があることを明らかにした。シミュレーションで得られた最適デバイス構造をもとに、産業技術総合研究所のプロセスラインに適合したデバイス構造とその作成方法を決定した。 2021年度は新規光電変換デバイスを産業技術総合研究所の超高速電子デバイス製造ラインで作製する確認実験として、従来型光電変換デバイスである単一走行キャリヤフォトダイオードを作製した。また新規光電変換デバイスに特化した測定装置の設計と構築を行った。作製したデバイスから放射されるテラヘルツ波強度測定の結果、産業技術総合研究所の製造ラインを用いても、10年以上の実績のある他機関製の単一走行キャリヤフォトダイオードと同等以上の強度が得られることが確認された。さらに新規超高速光電変換デバイスの原理動作確認実験として、InGaAsフォトカソード上の1μm離れた空間にアノード電極を形成した。この光電変換デバイスに光を入射してフォトカレントを測定した結果、フォトカソードから電子が放出され空間を走行することを示唆する電圧―電流特性が得られた。 上記成果による外部発表の研究開始から2021年度末までの実績は、学術論文8件(査読あり)、国際会議14件(査読あり)、その他国内学会での発表(査読なし)多数である。
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今後の研究の推進方策 |
テラヘルツ波強度を抜本的に増大し新たな産業分野の開拓の礎となる技術を確立することが目的である。そのためにレーザ光のコヒーレンス性を用いて複数光波からフォトダイオード内でフォトミキシングを行う、テラヘルツ波パルスビームという新たな概念の電磁波領域を開拓する。 今年度開発した半導体犠牲層エッチング法と並行して、従来のウエハ接合技術を発展させ、微細加工を施したウエハどうしを貼り合わせて、デバイス構造内に電子を走行させる約0.2ミクロン厚の自由空間を形成するプロセス技術を開発する。具体的には(a)接合面材料と高電界印加時の絶縁耐性、(b)接合面粗さと気密性・接合強度、(c)ウエハ平坦性と可能なアレー規模、の関係を明らかにし100アレー規模(大きさ3mm×3mm)の集積化技術を確立する。デバイス作製の第二の技術として、光吸収層から自由空間への光電子放射の高効率化を行う。先行研究(光電管の実用化技術)で30%以上の効率が報告されているCsO処理アルカリ活性面による光電面の電子親和力低減技術をベースに、さらに新デバイスの特徴である高い電界(光電管よりも3桁短い自由空間のため同電圧で電界強度が3桁増大)による電子の電界放射効果を利用した効率のさらなる向上を検討する。加えて新デバイスのアレー化により1桁以上のピークパワー増大を目指して、無線通信であれば周波数500GHz~1THzでの超100Gbit/s容量、距離100m~1kmの伝送が可能となる技術を確立する。
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