研究課題/領域番号 |
20H00255
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
運上 茂樹 東北大学, 工学研究科, 教授 (60355815)
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研究分担者 |
松崎 裕 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (10506504)
内藤 英樹 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50361142)
藤倉 修一 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (90782558)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 次世代耐震構造 / ダメージフリー構造 / 自己検知構造 / 自己診断構造 |
研究実績の概要 |
本年度は,昨年度基本構造の開発を行った「マルチ・アブゾーバ変形吸収機構」と「マルチ・ステップ変形吸収機構」に関して,その有効性と制御に必要な条件について検討を行った.マルチ・アブゾーバ変形吸収機構については,ロッキング変形によって大変形を吸収可能で接続する部材への荷重伝達を遮断制御することが可能な要素部材を開発し,地震動を受ける場合の構造物モデルの数値シミュレーションを通じて,各部材の損傷程度を低減させ,変形吸収性能を格段に高める構造を実現できることを明らかにした.また,本研究開発をより実証的に進めるために,大変形吸収機構を導入した実構造物において,「変形吸収機構」と「状態把握オブザーバ」の実験計測とデータ分析を行った. マルチ・ステップ変形吸収機構については,昨年度開発した基本構造に対して,柱部材の要素実験によってその挙動特性を検討するとともに,数値シミュレーションを行い,変形吸収機構の数学モデルの構築と機構に付与すべき力学特性を明らかにした.上部構造,支承,橋脚,基礎で構成される橋梁構造物を想定し,橋脚部材の非線形復元力特性として,2次勾配をパラメータとした静的プッシュオーバー解析と地震応答解析を行い,支承,橋脚,そして,基礎の3部材において段階(ステップ)的に変形を吸収させ,各部材の損傷を制御,低減するとともに,構造全体として各段に変形吸収の増大を図ることができることを明らかにした. 状態把握オブザーバについては,大変形吸収機構を有する実構造物にビルトインし,挙動・損傷程度の検知性能の検討のための実験計測とそのデータ分析を行った.また,柱部材に対する要素実験の振動モニタリングを行い,その計測データに機会学習を組み合わせることにより,有効に損傷検知ができる可能性のあることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチ・アブゾーバ変形吸収機構については,大変形が吸収可能で接続する部材への荷重伝達を遮断制御することが可能な要素部材の開発を行い,数値シミュレーションを通じて,各部材の損傷程度を低減させ,変形吸収性能を格段に高める構造として実現できることを明らかにした.マルチ・ステップ機構についても同様に,開発した基本構造に対して,その挙動特性に関する要素実験とともに,数値シミュレーションを行い,変形吸収機構の数学モデルの構築と機構に付与すべき力学特性を明らかにした. 状態把握オブザーバに関しては,大変形吸収機構を有する実構造物にビルトインし,挙動特性と損傷程度の検知性能に関する実験計測とそのデータ分析を行った. 上記の研究成果については,国際ジャーナル誌1編の論文発表を含め,合計4編の学会発表を行った.また,さらに1編を国際ジャーナル誌に投稿中,2編を2022年内に開催される国際会議にエントリーした.また,本年度,要素技術として開発した大変位吸収機構について特許出願を行った. 以上から,本研究について,おおむね順調に進展していると評価している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は,研究対象としたマルチ・アブゾーバ変形吸収機構とマルチ・ステップ変形吸収機構をビルトインした構造を対象に,数値シミュレーションとともに,模型載荷実験を実施し,変形吸収に関する制御方法と制御に必要な条件を解析的,実験的に明らかにする.また,状態把握オブザーバについては,変形吸収機構を有する実験模型とともに実構造物の観測実験を実施し,挙動特性や損傷特性の検知性能について明らかにする. 共同研究者間で,実験・分析などを分担,連携しながら研究を推進する予定である. なお,新型コロナ感染症の影響の収束状況が見ていえない点もあり,実験や観測の実施に際しては,実験場所,実験方法・実施体制等に留意しながら進める予定である.
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