研究課題/領域番号 |
20H00260
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
前川 宏一 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80157122)
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研究分担者 |
藤山 知加子 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60613495)
千々和 伸浩 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (80546242)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 火災 / 爆裂 / 水和反応 / 腐食ゲル / マルチイオン / 凍結融解 |
研究実績の概要 |
多数のイオンを含むセメント硬化体中の細孔溶液と硬化体間で形成される気液2相の平衡モデルを、固-液-気の三相平衡まで拡張し、一般化した状態方程式を複合離散モデルの形で定式化した。複数イオンの相互平衡と水酸化カルシウム、フリーデル氏塩、エトリンガイトの溶解と沈殿を統一的に扱い得る枠組みとした。これにより、ひび割れに代表される中間メソスケール空間における水分―多種ゲルの移動を扱うことができるようにした。可視化実験を考案して、多種イオンの移動を計測するシステムを形成し、モデルの多角的な検証を実施する基盤を得た。
アルカリ骨材反応、鋼材腐食、凍結融解作用が組み合わさった場合の、コンクリートの損傷と腐食ゲル+シリカゲル粒子の移動と固定を解析し、数値予測結果を実験で検証を行った。アルカリイオンの移動に関係する駆動力は、鋼材腐食ゲルと液状水のそれを上回ると仮定して、複合劣化の事前解析を試行した。耐久性に関わる物理・化学反応速度の大小関係で、複合劣化に強い履歴依存性が現れ得ることを確認できた。
摂氏400度を超えると,セメント硬化体から結晶水が脱落し、ゲル空隙が減少してキャピラリー空隙が増加する。これらの構造変化とメソレベルの材料物性との関係をマルチスケールモデルを用いて統合を図った。1,000度を超える環境での再クリンカー化もモデル化の対象とし、除熱後に水分が付与されたときの再水和反応の計算を可能とした。ひび割れを含むマクロ構成則を組み入れているので、水蒸気圧の上昇に伴うコンクリートの連続爆裂を数値解析上で検証した。RC部材の火災実験の結果から、ほぼ構造応答を追跡できることを検証した。高温暴露された構造部材の耐荷力解析を行い、大型火災実験装置による部材レベルでの強度を検証した。部材耐力をほぼ予測できることが認められた。ただし、部材剛性には倍程度の差があり、原因の解明に向けた検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温領域でのモデル化と検証は、ほぼ予定していた通りの進展を得た。これで複合劣化を数値解析で再現できることを確認した。一方、火災を想定した1000℃以上の高温領域では、結晶水の脱落と細孔組織の変化が組み合わさって、水分平衡計算が安定しない状況に直面した。常温に比較して非常に大きい飽和蒸気圧が発生するからである。これに対しては、ナノサイズの空隙における水蒸気移動のモデルを改良することで、数値解の安定を得ることができた。
マルチイオン平衡の解析では、コンクリートの細孔溶液を模擬した高分子電解質材料を新たに考案し、これを用いることで多種イオンの実測値を得ることができたことは、予想外の進展であった。一方で、コンクリートの細孔内に捕捉された液状水に溶存する二酸化炭素が、多種イオン平衡に無視できない影響を及ぼすことが明確になった。当初の計画では強く意識されていなかった。そこで、計測項目を増やし、解析システムに溶存二酸化炭素を加える形で対処する方向を得た。
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今後の研究の推進方策 |
二酸化炭素と重炭酸イオンとカルサイトの化学平衡と同時に、高温でコンクリート中に存在するポルトランダイトから変性したカルサイトが、さらに高温域で分解して生石灰を生成する過程を、これまで以上に精度を高める方向で、研究開発を進めたい。なお、ポルトランダイトの炭酸化反応から生成されるカルサイトが高温で生石灰にも転換することも陽にモデルに取り入れる必要がある。これら、生成の過程は異なるものの、火災被害を受けたインフラの復旧の観点でみれば、生石灰は常温で水蒸気と反応して火害を受けたコンクリート構造の強度回復につながることが期待される。今後においては、高温履歴後の自己回復にも視点を当てて、モデルの開発を進めることが肝要との印式している。
高温状態から氷点下の低温に至り、かつ凍害を受けたコンクリートが火災被害を受ける状況で進行する事象と構造応答を評価する方向にも展開を図り、理論と適用範囲を拡大していく方向に進める。凍結融解、火災、アルカリ骨材反応の混成からRC構造物が受ける耐震性能の評価および耐疲労性能までの幅を持たせるように研究を推進する。
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