研究課題/領域番号 |
20H00272
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
楠 浩一 東京大学, 地震研究所, 教授 (00292748)
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研究分担者 |
向井 智久 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 主任研究員 (30318208)
田村 修次 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (40313837)
日比野 陽 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (50456703)
長江 拓也 名古屋大学, 減災連携研究センター, 准教授 (90402932)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 杭基礎 / 鉄筋コンクリート造 / 終局設計 / マクロモデル |
研究実績の概要 |
連層耐震壁脚部における杭基礎の設計において、取りつく基礎ばりを含めた設計方法の合理化のため、連層耐震壁に取り付く基礎ばりの降伏を考慮した時の、連層耐震壁脚部のマクロモデルについて再検討を行い、提案式を作成した。一般的に行われている基礎ばりを剛強として基礎ばり部で上部構造と下部構造を分離する解析手法を用いつつ、提案するマクロモデルを用いて耐震壁脚部の応力状態を簡易的に修正し、設計に用いることを想定している。この方法により、煩雑で実施には高い技術力を要する建物と杭基礎の一体解析を実施する必要がなくなる。また、提案する手法を検証するため、杭基礎を有する8階建ての連層耐震壁付き鉄筋コンクリート造建物の試設計を実施し、その挙動を確認した。今後は基礎ばりの強度をパラメータとした解析が必要であることを確認した。 次に、基礎ばりの降伏が連層耐震壁脚部の杭基礎および基礎ばりの応力に与える影響を考慮するため、杭基礎を有する建物モデルの動的遠心載荷実験を東京工業大学で行った。試験体は1×3スパンの1層試験体で、各柱下に1本の杭を有している。3スパン方向に加振し、その中央スパンに耐力壁を有するものと有しないものの2種類とした。本年は杭先端部を土槽底面に固定した条件とした。杭基礎に作用する変動軸力は、耐震壁を有しない場合は隅柱にしかほとんど生じなかったが、耐震壁を有する場合には耐震壁に取り付く杭基礎にも大きな変動軸力が作用することが確認できた。また、耐震壁のロッキングが杭頭曲げモーメントを緩和する方向に作用したことを示した。今後は歪測定点を増やし、基礎ばりの応力状態についても明らかにする必要があることを確認した。 また、地盤を含めた基礎の応力状態を正確に予測することは難しく、強度型の設計を採用したとしても、応力変化に対応するためにある程度の靭性を杭に付与する必要がある。そこで、既往の実験結果を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はCOVID-19の影響で、遠心載荷装置の利用と実施が危ぶまれたが、東京工業大学の装置の使用が可能となり、また、緊急事態宣言解除中に実験の実施が可能であった。申請当初は耐震壁の挙動に関する海外の研究者との意見交換のためのWSを開催することを計画していたが、COVID-19の影響を踏まえて、2020年度研究計画からは除外していた。その為、課題全体の遂行においても、COVID-19の影響を最小限に抑えることが出来た。 2020年度は打ち合わせを全てオンラインに変更し、物理的な対面での会合を実施することは出来なかった。しかし、計8回に及ぶオンライン会議を実施し、各研究テーマに関する検討の進捗状況、特に設計方法の検討においても活発な議論を持つことが出来た。 建物と杭基礎の一体解析の実施についても、計画通りに実施することが出来、その結果を踏まえてオンラインで活発な議論を行い、解析結果の検討から見えてきた課題、および今後必要となる解析検討事項についても整理することが出来た。 以上の状況から、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に実施した遠心載荷実験を踏まえて、更に歪測定点を増やし、基礎ばりの曲げモーメント分布、杭の曲げモーメントと軸力分布を耐震壁の有無をパラメータとして実施する。計測点数を増やすためには、例えば京都大学防災研究所の遠心載荷装置で実験することも予定している。COVID-19の影響もあり、利用が叶わない場合は、測定点を厳選し、東京工業大学の遠心載荷装置を利用する。 2020年度実施した建物と基礎の一体解析結果から、基礎ばりの強度を変更することで大きく崩壊形式が異なる可能性が分かった。そこで、昨年度に引き続き、解析検討を進めることとする。この解析結果を用いて、提案しているマクロモデルによる設計用応力修正の方法の妥当性を併せて検討する。 杭と基礎ばりの設計用応力を合理的に算出されたとしても、基礎応答の不確実性を考慮すると、杭には十分な靭性能を付与することが望ましい。そこで、軸力下での杭の変形性能や高靭性化についての方策を静的加力実験により実験的に検討する。この検討は研究分担者である日比野・向井を中心に実施する。また、2022年度に実施予定の、基礎ばりと杭基礎の部分実験の詳細計画を検討する。 2021年4月時点でも、COVID-19の猛威は収まっておらず、2021年度に収束する見通しは現時点ではない。そこで、2021年度も物理的な対面での会合は、実験の実施や実験施設を確認しながら議論する必要のある実験計画の検討に限ることとし、研究打ち合わせは基本的にはオンラインで実施する。また、当初予定していた海外研究者との意見交換を目的としたワークショップの開催も、次年度以降に検討することとして本年度は実施を見送ることとする。
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