研究課題/領域番号 |
20H00294
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小平 秀一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門, 部門長 (80250421)
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研究分担者 |
尾鼻 浩一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震発生帯研究センター), センター長代理 (10359200)
野 徹雄 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震発生帯研究センター), 研究員 (20512031)
今井 健太郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), グループリーダー代理 (20554497)
谷岡 勇市郎 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40354526)
近貞 直孝 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波防災研究部門, 主任研究員 (90318197)
馬場 俊孝 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (90359191)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アウターライズ / 千島海溝 / 津波 |
研究実績の概要 |
千島海溝沖アウターライズ地震震源断層マップ作製に向けて襟裳海山周辺から納沙布断裂帯までのMCSデータの解釈を進め正断層マッピングを行った。 MCSデータの解釈作業は、海溝海側斜面に形成されている正断層を地震探査データ解釈ソフトPetrel上で読み取り、海底面、堆積層、海洋地殻上面が断層として認定できるところを読み取った。断層の下限については同定していない。さらに、MCSデータから解釈した正断層の空間的な接続(断層マッピング)は、海底地形データとNakanishi (2011)による結果をもとに検討した。 その結果、マッピングした断層の総数は293である。襟裳海山から納沙布断裂帯の間に位置する断層に関して、断層の平均走向がN67Eで、多くの断層がN60~75度Eに分布する。本研究の対象に位置する千島海溝西部の走向はN65度Eで、中生代磁気異常縞模様の走向が約N70度なので(Nakanishi, 2011)、多くの断層の走向は海溝の走向や磁気異常縞模様の走向に近接した値を示している。また、断層の傾斜角に関しては多くが50~70度となり、垂直変位は海溝に近づくにしたがって大きくなる。また、最大地震規模のマグニチュードを見積もるために、マッピングした断層を接続して、津波計算のための震源断層モデル構築を行った。断層の接続は松田(1990)に従い、マッピングした断層が5 km以内に位置し、同じ方向(北側または南側)へ傾斜している断層を選択し、接続された断層の長さが最長約60 km以上(マグニチュード7.3以上相当)になる震源断層を設定した。結果として、17本の震源断層が構築され、最長の断層は260 kmとなった。 これらに加え、次年度に実施する地震観測の観測計画を作成し、海底地震計など必要な観測機材の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染拡大が続く中ではあったが、今年度は地形データ、MCSデータの処理・解析の取りまとめを進め、断層マッピングはほぼ予定通り進捗した。次年度実施の地震観測準備も予定通り進捗した。プロジェクト参画者全員の打ち合わせを2か月に一度程度実施し、次年度以降の津波評価の準備として、必要な断層情報の検討などを進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は北海道沖の千島海溝南部アウターライズ域における震源断層の位置・形状等の情報を活用し、アウターライズ地震による津波の即時予測精度の検証を行う。そのために、これまでに処理・解析・解釈した地震探査データなどに基づき、断層の傾斜、落差、走行などのパラメータを精査し、取りまとめる。また、地震活動により震源断層の下限を決定するため千島海溝南部アウターライズで年度前半に約3か月の地震観測を実施する。この観測データを用いて、地震活動の深さ分布と震源メカニズムの推定を行う。これにより、正断層地震の下限からアウターライズ地震震源断層の下限を決定する。地震の規模が小さく震源メカニズムが決められない場合は、観測データの波形の特徴(初動の押し引き)からプレート沈み込み方向に張力軸を持つ地震の下限を推定し、震源断層の下限を決定する。 津波評価では作成した震源断層マップ、断層パラメータを基にアウターライズ地震津波評価と即時予測精度の検証を開始する。ここで扱う津波予測手法は申請者らによって近年開発された独創的なDB型手法(Yamamoto et al. 2016)とする。予測精度の評価は、既存の津波DBを使って調査観測より得られたアウターライズ地震の津波のS-netにおける疑似観測データを入力して、沿岸津波高を予測し、真値と比較することにより行う。この際、疑似観測データと真値は複雑な物理を含むシミュレーションで準備するが、これについては先行研究(19H02409、基盤研究B、代表馬場俊孝、2021年度終了)の成果を利用する。
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