研究実績の概要 |
今年度では、様々なイオンドープタングステンサブオキサイドW18W49及びハロゲン元素ドープ酸化バナジウムの低温合成について検証し、さらに、赤外線遮蔽機能ナノ粒子の成膜手法についても検討を行った。 W18O49の赤外線遮蔽機能はWの混合原子価状態に由来し、自由電子がW5+とW6+間での激しい往来により、赤外線領域における光吸収をもたらしたと考えられる。Cu,Mo,Ni,Ce,Sb,F等様々なカチオンとアニオンドープを施し、赤外線遮蔽効果に及ぼす影響を検証した。SbドープしたW18O4は最も優れた赤外線遮蔽機能を示すことが分かった。 VO2に関して、異なるハロゲン元素ドープによる、単斜晶VO2(M)相から正方晶VO2(R)相への半導体-金属相転移温度の効率的制御できることを明らかにした。しかしながら、その合成は比較的高温(490℃)で行うことが必要であり、環境にやさしく、迅速加熱可能なマイクロ波アソシエイト水熱プロセスにより、比較的低温での合成の可能性を検証した。240℃,4hでのマイクロ波水熱反応では、単一相VO2(M)相のワンステップ合成が可能であると見出した。また、マイクロ波水熱反応で得られたものは、粒子サイズが小さく、通常の高温水熱法で得られた生成物からなる薄膜に比べ、透明性の向上が確認された。しかし、FドープVO2では相転移温度や遮蔽能においてまだ改善の余地がある。 また、粉体材料のシート化についても検討し、ナノ粒子をコロジオンやエタノール等の溶媒に分散し、ドクターブレード法などによる薄膜を調整できると共に、ナノ粒子をポリジメチルシロキサン(PDMS)に分散し、ナノ粒子ーポリマーハイブリッド材料創製を行い、ガラス基板に張り付け可能なフレキシブルなフィルムの調製が可能であることを見出した。薄膜の品質向上に関して、さらなる検証が必要である。
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