研究課題/領域番号 |
20H00300
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳本 潤 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90220194)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 複合材料 / 金属シート / 三次元周期コア / トポロジー最適化 / 3Dプリンタ |
研究実績の概要 |
複層構造は、優れた機械的特性を発現する構造である。本研究では、金属被覆材(フェースシート)に挟む連続/非連続炭素繊維CFRPコア材の3次元幾何構造を制御することで、多様な力学特性を持つ薄板材料を創造し、製作し、評価することを目的とする。具体的には、 1)メタルフェースと3次元周期構造を持つ樹脂あるいは炭素繊維強化複合材料コアからなる複層構造の、コア構造を最適化する方法 2)得られた構造を熱溶解式3Dプリンタ(樹脂あるいは熱可塑性短炭素繊維強化複合材料(CFRTP)を模擬)ならびに光造形式3Dプリンタ(熱硬化性長繊維強化複合材料CFRPを模擬)造形しフェースシートを接合したプロトタイピング 3)以上で提示されたコアを、樹脂または炭素繊維強化複合材料の、デジタルサーボプレスと金型を利用した温間スタンピング成形で作製しフェースシートと接着して薄板化の、3つの段階(ステージ)を研究対象とする。 まずはコアの3次元立体周期構造の決定に重点を置き、研究を行っている。3次元立体構造の決定にはトポロジー最適化を利用し、最適化された構造の造形には3Dプリンタを用い、フェースシートとの接着は曲げ剛性評価には、既存設備であるオートクレーヴやサーメックマスターを利用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,Additive Manufacturingによる樹脂あるいはCFRTPコアの製造を前提として,今までの研究を発展させ,研究を進めた結果を述べた.まず所定の密度の制約の下で最適な剛性を持つ構造をトポロジー最適化により得る方法を示し,構造を最適化した.外形をドーム構造とし内部に格子があるMicro lattice structureを選定し,局所的な構造の等価ヤング率とポアソン比を求めたうえで大域的なトポロジーや寸法の最適化を行い,得られた構造(大域的構造)の圧縮剛性と曲げ剛性を比較した.ついで,トラス・球面シェル・三角板を基本単位とする大域的コア構造の最適化を行った.ついで二次成形性と機械的特性(剛性)の同時に最適化するコア構造をトポロジー最適化により求め,Additive ManufacturingによりCFRTPコアを製作し,実験による成形性の評価結果をFEM解析結果と比較した. ここで提案したコア構造は,Additive Manufacturing で製造が可能であり,この3次元形状を持つ構造を持つコアとメタルフェースシートからなるハイブリッド薄板素材をさらに二次成形(賦形)を可能とすることは,比強度,比剛性に優れた薄板素材の安価な供給に繋がり,今後の構造材料選択肢を大きく広げる.さらに本研究で提案したハイブリッド薄板素材の製造方法(逐次スタンピング成形,Additive Manufacturing)と設計手法(例えばトポロジー最適化手法)は,金属や樹脂成形などに波及し,これらの分野の研究の進歩に資するものである.
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今後の研究の推進方策 |
フェースシートをオーステナイト系ステンレスSUS304/SUS316あるいは純チタン(pure Ti)薄板とし、板厚は1mm程度とする。コアは3次元立体周期構造を持つ熱可塑性および熱硬化性樹脂、CFRP (熱硬化性長炭素繊維強化複合材料)、CFRTP(熱可塑性短炭素繊維強化複合材料)を材料とする。また、金型を利用した温間スタンピング成形での成形を考え、立体周期構造の板厚は面内で一様で1mm程度を標準とする。さらに,トラス構造などの複雑な構造をもち機械的特性と塑性変形が優れたメタルフェース・3Dコアハイブリッド構造を,2021年度までに導入した3Dプリンタと既存設備であるオートクレーヴを利用して作製する。作製する部材は、3点曲げ試験が可能な寸法である、幅200mm×奥行20mm以上×厚さ(1mm+コア見かけ厚さ+1mm)とする。 【最適化/計算機シミュレーションステージ】 コア構造最適化の目的関数を、複層構造板の曲げ成形性(塑性変形能)に変更して検討を継続する。併せてトポロジー最適化の適用も検討する。【物理シミュレーションステージ】 2020年度および2021年度の研究を継続し、3Dプリンタによる、CFRTPおよびCFRPコアの3次元立体周期構造作成を模擬した物理シミュレーションを継続する。【成形ステージ】 金型2組を追加製作し、温間スタンピング成形実験、フェースシートとの接合試験を行う。さらに作製されたメタルフェース・3Dコアハイブリッド構造のコアの微細組織解析のための樹脂埋め込み機を導入し、既存設備である研磨機顕微鏡を利用して実施する。
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