研究課題/領域番号 |
20H00302
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大場 史康 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (90378795)
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研究分担者 |
野瀬 嘉太郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00375106)
高橋 亮 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80822311)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 機械学習 / 半導体 / ドーピング |
研究実績の概要 |
ハイスループット第一原理計算による系統的な理論予測と物性・安定性に関する計算データの機械学習に基づいて、無機化合物における固有点欠陥の形成挙動・電子状態と様々な形態でのドーパント添加によるキャリアドーピングの有効性を、半導体としての応用に関わる種々の基礎物性と併せて俯瞰的に考察し、ワイドギャップ半導体の設計・探索の指針を構築することを最終目的として研究を推進した。本年度は、高精度・高速第一原理計算及び機械学習に基づいた基礎物性・安定性・キャリアドーピングのハイスループット予測技術の開発を重点的に推進するとともに、特定の既知・新規物質の基礎物性と点欠陥・キャリア形成挙動の詳細な考察、候補物質のハイスループットスクリーニングの試行、予備検討済みの物質の合成と電子・光学物性評価に着手した。とくに、代表的なワイドギャップ半導体である炭化ケイ素のキャリア有効質量の結晶構造・歪み依存性の理論予測と対称性の観点からのその起源の考察(AIP Advances 誌2020年出版)、酸化物半導体・絶縁体の誘電率等の物性のハイスループット第一原理計算と計算データの機械学習による予測モデルの構築及び物性決定因子の考察(Physical Review Materials 誌2020年出版)等に関する具体的な成果が得られた。これらは上記の最終目的を達成する上での基盤的な成果であり、また今後の研究展開に関する有益な知見を与える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに高精度・高速第一原理計算及び機械学習に基づいた基礎物性・安定性・キャリアドーピングのハイスループット予測基盤構築のためのプログラム開発を進めるとともに、その手法を上述のように既知・新規物質の基礎物性と点欠陥・キャリア形成挙動の考察やハイスループットスクリーニングの試行に応用した。これにより、個別に精査した物質の半導体としての応用可能性の判定に関わる基礎物性・点欠陥形成挙動・ドーピングに関する情報を得るとともに、スクリーニングの効率化につながる予備的データの獲得等、今後の新規半導体の設計・探索に関する重要な知見が得られた。また、実験に関しても、予備検討済みの物質の合成・物性評価が当初計画通りに進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に開発に着手した高精度・高速第一原理計算及び機械学習に基づいた基礎物性・安定性・キャリアドーピングのハイスループット予測のためのプログラムを、とくに一連の計算プロセスの自動化の観点から高度化する。これにより系統的なデータ生成を行い、計算データベースを拡大するとともに、ランダムフォレスト回帰等により物性や安定性の予測モデルの構築を行う。また、これらの技法のハイスループットスクリーニングへの応用とスクリーニング結果の検証実験を進める。具体的には、基礎物性及び安定性の観点からの基本スクリーニングにより有望物質を選出し、ドーパント、固有点欠陥、ポーラロンの評価へと展開することで、ドーピングの多角的検討を行う。得られたデータを統計処理することで、多様な観点から設計・探索指針を構築・更新していく。以上により、ワイドギャップ半導体として有望と考えられる物質を提案する。また、提案された候補物質の半導体としての応用可能性を、基礎物性とドーピングの観点から実験的に検討するとともに、その結果を計算・機械学習予測モデルによる材料設計・探索にフィードバックする。
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