研究課題/領域番号 |
20H00305
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
三浦 博己 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30219589)
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研究分担者 |
渡邊 千尋 金沢大学, 機械工学系, 教授 (60345600)
下川 智嗣 金沢大学, 機械工学系, 教授 (40361977)
青柳 吉輝 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70433737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超微細粒 / 超高強度純チタン / MDF / 加工熱処理 / 力学特性 / 集合組織 / ヤング率 / 医工連携 |
研究実績の概要 |
工業用純チタン(2種)に多軸鍛造(Multi-Directional Forging/MDF)後に平圧延,溝ロール圧延,さらにスウェージャーを適宜適用し,板材,ワイヤー,バルク材を作製した.板材は,最大引張強度1GPa以上と塑性伸び10%以上の優れた機械的特性を有していた.これは,チタン合金の機械的特性と同等以上である.一方,ワイヤー製造では,さらに高い1.1GPa以上の引張強度を達成可能な加工熱処理プロセスを見いだした.さらに,歯科インプラントとしてワイヤーのヤング率は,集合組織と内部欠陥によって影響を受けることが明らかとなった.スウェージャーはワイヤー製作上簡便な方法であるが,強度が上がりにくく,主要なプロセスとしての利用は適切では無いことが示された. 昨年と同様に実験によって得られた各種結晶塑性・力学的特性情報を金沢大と東北大の計算グループに提供し,その変形挙動と特性発現機構についてシミュレーションを行って頂いた.シミュレーション結果と実験・観察結果の照らしあわせから,i) 変形には動的双晶変形が深く関わっていること,ii) 集合組織が変形挙動に大きく影響を及ぼしいている事,iii) 底面以外のすべり変形が室温で起こっている事,等が明らかとなった.よって,結晶粒微細化に加えて,集合組織制御が極めて重要な研究目標となることが示された.. MDF材は,医科歯科系大学の研究室にも提供され,歯科クラウンへの適用が検討された.その結果,チタン合金に比べて切削加工性が優れており,他の特性はチタン合金と同等以上である事から,MDFによって作製されたヘテロナノ純チタンはチタン合金材の有効な代替材として様々な部位に於いて利用可能である事が示された. ヘテロナノ組織化が他の金属・合金でも可能で,極めて優れた機械的特性が得られることを示すとともに,その展開が検討された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MDFと様々な加工熱処理法の組み合わせにより,当初目標を大幅に超えた機械的特性を達成できた.同時に,最も重要な因子の一つであるヤング率低下が,集合組織と内部欠陥の制御によって可能である事が示された.これにより,生体適合性に優れたヘテロナノ純チタンの設計思想とその方針が具体的になってきたと考えられる.これらの現象を,計算グループと共有し,より優れた特性への改質を行う道筋が立てられた. 医学歯学系大学への試料提供と調査により,様々な歯科部位でヘテロナノ純チタンの優れた特性が確認され,適用の可能性が広がった.
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今後の研究の推進方策 |
上に記したとおり,当初目標を大幅に超える高強度を達成することが出来,同時に,ヤング率低減のための因子が明らかとなった.今後は,計算科学援用の元,さらなる高強度化の可能性とその原理について検討する.さらに,その際のヤング率低減のための尖鋭な集合組織形成のためのプロセスについて,詳細に検討する.そして最終年度には,最適プロセス条件の探索,変形中の動的挙動の調査,変形双晶と格子欠陥の相互作用の検討,ヘテロナノ純チタンの最適構造モデリングに関する詳細かつ系統的な研究を経て,最適加工プロセスと指導原理の確立を目指す. 同時に,他の金属・合金のヘテロナノ組織化と超高強度化の可能性についての研究も併せて行い,日本の産業技術の「種」として発展・確率させたい..
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