研究課題/領域番号 |
20H00306
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻 伸泰 京都大学, 工学研究科, 教授 (30263213)
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研究分担者 |
足立 大樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00335192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金属材料 / 不均一ナノ組織 / 力学特性 / デジタル画像相関法 / 変形中放射光その場回折 / 鉄鋼材料 / 強度 / 延性 |
研究実績の概要 |
軟質な相・ドメインと硬質な相・ドメインがナノスケールで組み合わさった組織(ナノヘテロ組織)を有する金属材料は、しばしば高い強度と大きな延性を併せ持つ。局所的には異なる変形挙動を示す軟質ドメインと硬質ドメインが、ミクロ組織中に共存すると全体として優れた力学特性をもたらす理由を明らかにすることが、本研究の目的である。二相鋼に対して、研究代表者がこれまでに獲得した手法と知見を駆使し、組織のナノ化と分布状態等の制御を行う。組織制御されたナノヘテロ組織材料(ナノ二相鋼)の変形挙動を、デジタル画像相関法(DIC)や引張変形中のその場放射光X線回折といった先端的手法で解析する。得られた結果をもとに、ナノヘテロ組織材料(ナノ二相鋼)の優れた加工硬化の本質と軟質・硬質相間の変形拘束の影響を初めて定量的に解明し、ナノヘテロ組織がなぜ全体として優れた力学挙動を示すのかを明らかにする。2021年度は以下の研究項目を実施し成果を得た。 (1)Fe-Mn-C三元系合金に種々の加工熱処理を適用し、硬質相(マルテンサイト)の体積分率や分布状態をを種々変化させたDP組織試験片を作製することに成功した。 (2)(1)で作製したDP鋼の室温引張試験を行い、強度と延性に及ぼす組織パラメータの影響を明らかにした。 (3)(2)の引張試験時にDICによる局所ひずみ解析を行い、軟質相(フェライト)と硬質相(マルテンサイト)の間のひずみ分配挙動を定量的に測定した。 (4)(1)で作製したDP鋼に対して、前年度にDP鋼用に確立・チューンアップした変形中その場放射光回折を行うことにより、軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相それぞれにおける転位密度や相応力の変化を測定し、各相の分散形態や相の硬度差の変化によって、弾性/塑性変形挙動がどのように変化するかを系統的に調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fe-Mn-C三元系合金に種々の加工熱処理を適用し、硬質相(マルテンサイト)の体積分率や分布状態をを種々変化させたDP組織試験片を作製することに成功した。これら試験片に対し、強度と延性に及ぼす組織パラメータの影響を明らかにすることができた。また、引張試験時にDICによる局所ひずみ解析を行い、軟質相(フェライト)と硬質相(マルテンサイト)の間のひずみ分配挙動を定量的に測定するとともに、変形中その場放射光回折を行うことにより、軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相それぞれにおける転位密度や相応力の変化を測定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度獲得したDICによる局所ひずみ解析や変形中その場放射光回折実験のデータを用いて、最終年度である2022年度に、二相鋼に関する研究を予定通り継続し、局所的には異なる変形挙動を示す軟質ドメインと硬質ドメインが、ミクロ組織中に共存すると全体として優れた力学特性をもたらす理由を明らかにする。
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