研究課題/領域番号 |
20H00308
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松垣 あいら 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10592529)
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研究分担者 |
中野 貴由 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30243182)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん転移 / 骨配向性 / 細胞間相互作用 / 細胞配列 / アパタイト結晶 / 前立腺がん / 乳がん |
研究実績の概要 |
ここまでの研究で確立した、生体内外でのがん骨転移モデルを用いることで、がん転移がもたらす骨脆弱化の要因解明に取り組んだ。とりわけ、骨配向性を考慮したがん浸潤模倣転移骨培養モデルを駆使することで、骨組織へのがん細胞の流入から生着、増殖、骨組織異常をもたらす要因について、材料学的・生物学的両観点から研究に取り組んでいる。具体的には、以下の成果を得た。 (i) in vivoマウス転移モデル:乳がん・前立腺がん骨転移ではそれぞれ造骨性・溶骨性の特徴的な骨形態変化を示し、骨形成、骨溶解部位に着目することで微細構造との関連が明確になった。具体的には、転移によるコラーゲン/アパタイトの顕著な配向性低下が、力学特性の劣化と深く関連することを見出した。 (ii) ex vivo骨組織転移モデル:培養転移骨の遺伝子解析から、がん細胞-骨系細胞間での細胞間結合分子(詳細は非公開)の発現変化が配向化低下と関連することを見出した。 (iii) in vitro転移培養モデル:がん-骨系細胞共培養モデルを用いて、細胞動態解析(タイムラプス観察)の実施により、がん種に応じた骨芽細胞との相互作用(遊走、細胞間情報伝達、形態異方性)が細胞配向性変化をもたらすことが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
がん転移による骨機能異常化の要因を材料工学に基づき解明、さらには、がん―骨組織の細胞レベルでの配向化相互作用を生物学的手法により解き明かすことで、転移骨の治療を可能とする創薬ターゲットの提示を目的として研究を進めている。昨年度までに、in vivo, ex vivo, in vitroの異なる複数のアプローチからがん転移モデル作製に成功、今年度は、各モデルの転移骨を対象に、材料学的・生物学的両アプローチから取り組むことで、配向性変化とその要因について複数の候補因子を見出し、当初計画以上に進展していると言える。具体的な項目ごとの進捗は以下に示すとおりである。なお、◎:当初計画以上に進展、〇:当初計画どおりに進展、を意味する。 (i) in vivo転移モデル:造骨型および溶骨型転移骨での配向性変化を発見(◎)、(ii) ex vivoがん転移骨組織培養モデル:がん細胞循環システムの作製により骨配向転移を人為制御(〇)、配向破綻をもたらす分子の候補(細胞間接着に関与:詳細は非公開)を発見(◎)、(iii) in vitro配向化がん転移モデル:がん種に応じた細胞間での動的相互作用(遊走、形態変化の異方性)が細胞配列破綻の要因であることを解明(◎)。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、in vivo、ex vivoおよびin vitroの異なるアプローチからがん転移モデルを作製し、それらモデルを用いることでがん種に応じた骨配向性変化とその要因となる細胞間作用について明らかにした。本年度は、これらがん転移モデルを駆使しつつ、新たに抗がん剤や破骨細胞活性抑制剤、骨粗鬆症薬など薬剤による骨配向化への影響を解明、さらには細胞動態の数理モデル化により異方性材料と細胞との相互作用の定量理解を目指す。これら方法論を用いることで、材料工学的・生物学的手法を両輪としつつ、遺伝子・分子、細胞、組織の各階層レベルから、がん形成を起点とした骨機能化破綻の本質に迫る。具体的には以下の方法に従って研究遂行する。
(i) in vivoおよびex vivo, in vitro各転移モデルにおいて抗がん剤、骨粗鬆症薬の投与による骨配向化への影響を組織・細胞レベルにて明らかにする。造骨性・溶骨性転移による細胞活性化に応じて細胞遊走や増殖・分化への作用を遺伝子解析にて明らかにする。 (ii) 遺伝子導入を活用した細胞イメージングにより、培養骨組織と転移がん細胞との単一細胞レベルでの相互作用を可視化、さらには分子授受による配向変化を捉えることを目指す。 (iii) 昨年度までに見出された、がん種に応じた骨芽細胞との相互作用について、タイムラプス解析による細胞動態と配向性との関連を細胞数理モデル化により理解する。具体的には異方性基板上でのがん細胞遊走の方向性、さらには骨芽細胞との直接的相互作用による配向性変化を時間・空間的変位として定量解析する。
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