ここまでの進捗で、in vivo、ex vivoおよびin vitroの異なるアプローチから組織~細胞の多階層レベルでがん転移模倣モデルを作製し、それらモデルを用いることでがん種に応じた骨配向性変化とその要因となる細胞間作用について明らかにした。重要な発見として、抗がん剤や破骨細胞活性抑制剤による骨配向化への影響とその機序を解明してきた。加えて、材料との相互作用を活用した細胞遊走の数理モデル解析により、単一細胞レベルでがん転移と骨微細構造の関係性が明確となり、当初の想定を大きく上回る成果を得てきた。最終年度である本年度は、これまでに確立した転移骨モデルを用いた細胞動態の数理化により分子レベルからがん骨配向化破綻のメカニズム解明に取り組み、材料工学的・生物学的手法を両輪としつつ、遺伝子・分子、細胞、組織の各階層レベルから、がん形成を起点とした骨機能化破綻の本質に迫った。具体的には以下の各項目に取り組んだ。 (i) 昨年度までに構築の足がかりを得たがん転移の数理モデル化を駆使し、がん種に応じた骨芽細胞との相互作用について定量的動態解明に取り組んだ。これによりがんー骨相互作用の空間的依存性、配向化の時間変化を追跡した。 (ii) 造骨性・溶骨性転移による細胞遊走や増殖・分化への作用の遺伝子解析を実施した。同定した制御因子について細胞異方性への影響を解析し、さらにはin vivoでの分子局在に注目した機序解明に取り組んだ。
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