研究課題
本研究は、透過電子顕微鏡法を駆使して、鉄における微小点欠陥集合体である「欠陥同素体」についての基礎的問題を解明することを目的とする。本研究は、点欠陥が導入される幅広い過程における微細組織発達を理解する上での基盤となるものである。本年度は、金属の変形下における微小点欠陥集合体と塑性変形のキャリアーである転位間の相互作用を透過電子顕微鏡観察するためのシステムを構築した。また、鉄における点欠陥集合体の一種である転位ループとすべり移動するらせん転位間相互作用の観察に成功した。その結果、転位ループとらせん転位間の相互作用には、大きな温度依存性があること、高温では、常温では起こらない「非弾性的」な反応が起こること等が明らかにされた。理論計算によれば、「欠陥同素体」は点欠陥集合における転位ループの前駆体と考えられている。上記の知見は、欠陥同素体と転位間の相互作用を理解する上での基盤になると思われる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、金属の変形下における微小点欠陥集合体と塑性変形のキャリアーである転位間の相互作用を透過電子顕微鏡観察するためのシステムを構築した。また、鉄における点欠陥集合体の一種である転位ループとすべり移動するらせん転位間相互作用の観察に成功した。その結果、転位ループとらせん転位間の相互作用には、大きな温度依存性があること、高温では、常温では起こらない「非弾性的」な反応が起こること等が明らかにされた。一方で、他施設での遂行を予定していた、「欠陥同素体」挙動の高分解能透過電子顕微鏡観察については、コロナ禍による事実上の出張規制のために必ずしも当初の計画通りに進められなかった。
引き続き、鉄の変形下における微小点欠陥集合体と転位間相互作用の透過電子顕微鏡観察を進める。また、「欠陥同素体」挙動の高分解能透過電子顕微鏡観察を進める。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
The Journal of Physical Chemistry Letters
巻: 11 ページ: 7015~7020
10.1021/acs.jpclett.0c01798
Materialia
巻: 12 ページ: 100778~100778
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