研究課題/領域番号 |
20H00313
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
小出 康夫 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (70195650)
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研究分担者 |
劉 江偉 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 独立研究者 (30732119)
廖 梅勇 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (70528950)
井村 将隆 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (80465971)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / III族窒化物 / ヘテロ接合 / ナノラミネート構造 / トランジスタ |
研究実績の概要 |
2020年度の研究実績は以下の通りまとめられる。 (1)2020年度は原子層堆積(ALD)型MOVPE法(既存設備)により、TMA、TMG、およびNH3それぞれを簡潔的にパルス供給することによるAlNおよびGaNの原子層堆積法を確立した。AlN、GaN、およびAlxGa1-xN(0<x<1)の1分子層成長の実現は、エリプソメトリ法により可視光反射強度のステップ状変化をその場モニターすること、および成長後に測定された膜厚およびステップ数から確認された。Si(100)基板上に[AlN(0.2nm)/GaN(0.04nm)](250対)のナノラミネート膜を成長させ、同程度膜厚のAlN単層膜に比べて3.6倍の誘電率増加を観測し、III族窒化物半導体のナノラミネート膜における誘電率の増大効果を世界で初めて確認した。 (2)原子層堆積(ALD)法を用いたTiOx[x nm]/AlOx[y nm](x, y = 1~2 nm)からなるナノラミネート膜をSi(100)/金属テンプレート基板上に作製し、比誘電率70~300を達成した。ラマン散乱分光、光電子分光、および電流―電圧特性から酸化物ナノラミネート膜内のTiOxの酸素欠損による酸素空孔拡散とAlOx界面における電荷ダイポール生成が誘電率増加メカニズムの鍵を握ることが示唆された。 (3)上記開発したTiOx[x nm]/AlOx[y nm](x, y = 1~2 nm)ナノラミネート膜をゲート構造に応用したダイヤモンドMOSFETを試作し、ドレイン電流50mA/mm程度のトランジスタ特性を得ることに成功し、ゲート比誘電率70を達成するともにナノラミネート構造の有効性を初めて実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子層堆積(ALD)型MOVPE法によりAlN、GaN、およびAlGaNの原子層堆積法を確立したこと、およびTiOx[x nm]/AlOx[y nm](x, y < 1nm)ナノラミネート膜をゲート構造に応用したダイヤモンドMOSFETを初めて開発し、ナノラミネート構造の有効性を初めて実証したことは初年度でありながら、当初予定通りに進んでいると評価できる。一方MgドープAlN成長とFETゲート展開は次年度以降で試作見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は昨年までの開発および確立した手法や未達の点を踏まえて、以下の通りの推進方策とする。 (1) その場エリプソモニター法を組み合わせた原子層堆積(ALD)型MOVPE法を用いてAlN/GaN、AlN/AlGaNナノラミネート膜を作製し、個々膜厚、ペア数、堆積温度など成長条件と誘電特性の関係を調べる。最終的に誘電率増大化の最適条件を見出した上で、微細構造観察からメカニズム探索を進める。 (2) 同様に原子層堆積(ALD)法を用いたTiOx[x nm]/AlOy[y nm](x,y = 1-2nm)ナノラミネート膜を用いてダイヤモンドFETおよびキャパシタを作製し、誘電率増大効果を実証するとともに、微細構造解析や電子分光法を用いて酸素欠損量と誘電率の関係を調べる。 (3) 昨年までに確立できなかった濃度1E20/cm3程度までのMgドープAlNをダイヤモンドエピ基板上に成長させることを試みる。同時にホール効果測定からダイヤモンド界面に発生する正孔キャリアを確認するとともに、Mg濃度と正孔濃度との関係を調べる。
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