研究課題/領域番号 |
20H00317
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
合田 圭介 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70518696)
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研究分担者 |
上村 想太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (00447442)
大矢 禎一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20183767)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 指向性進化法 / 細胞分取 / 酵母 / 発酵 |
研究実績の概要 |
本研究は、2018年に研究代表者らが多分野の最先端技術を結集させて開発した独自技術であるインテリジェント画像活性細胞選抜法(Intelligent Image-Activated Cell Sorting; iIACS)[Nitta et al, Cell 175, 266 (2018)]を基盤に、従来手法よりも1000倍以上高速で深層学習を用いたリアルタイム多変量分析による指向性進化法「インテリジェント指向性進化法」を開発し、それを用いた特定の形態を持つスーパー酵母の創出を目的とする研究である。すなわち、酵母に対して形態的特徴に着目した品種改良を行うという画期的なアイディアで、これまで得られなかったような高効率な発酵特性を持つ酵母などの創出により醸造・発酵業界に貢献することを目指す。さらには、酵母の持つ幅広い物質生産性能力を鑑みると、本研究の成果により、オイル生産や創薬へも繋がり、SDGsや人類の健康に資するスーパー酵母の作出をも可能になると考えられる。 この目的に対してこれまで、インテリジェント画像活性細胞選抜法のさらなる改善と応用展開を行い、多くの成果を得られてきた。具体的には、これまでよりも高速でかつ画質の良い画像を取得できるシステムとするために、低倍率レンズで高速撮影をしながら、得られた画像をディープラーニングにより仮想的に高倍率レンズ撮影画像のように変化させる技術Deep imaging flow cytometryを開発した。この技術は高性能な「インテリジェント指向性進化法」開発に直接的に結びつく成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術開発および応用展開ともに着実に進めているため、現在までの進捗状況はおおむね順調であると言える。技術開発においては、単純な装置設計の改善だけに留まらず、ディープラーニングを含む機械学習を用いることで、装置性能そのものを向上させることにチャレンジし、「研究実績の概要」に記載したdeep imaging flow cytometryという技術を確立した。さらに、応用展開に関しては特筆すべきものがある。すなわち、本プロジェクトにおいては、技術開発に終始するのではなく、しっかりと出口を見据えて研究開発を行っている。具体的には、本プロジェクトの応用先として、ビールの醸造を目標とすることに決め、醸造技術を持つ共同研究者の選定および交渉を行った。その結果、高いビール醸造技術を持つ共同研究先を見つけることに成功し、プロジェクト推進に向けて議論を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画通り、本プロジェクトの目標に向かってひとつひとつ研究を推進していく。具体的には、開発したdeep imaging flow cytometryの検証を進める。ディープラーニングを用いて装置の性能をさらに高める手法に関する検討も進める。現在のところ、装置の分取タイミングを細胞形状に従って予想することで、装置の高速化が図れると予想している。また、本プロジェクトを単なる技術開発に終始することのないように注意し、応用先をスーパー酵母による独自のビール創出に絞り、ビール醸造のテストへと進める。これらにより、当初の目標であったインテリジェント指向性進化法を開発し、それを用いた特定の形態を持つスーパー酵母の創出するという目標に近づくように研究を進める。
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