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2021 年度 実績報告書

バイオ医薬品生産細胞構築の統合アニマルセル・エンジニアリングシステムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 20H00322
研究機関九州大学

研究代表者

上平 正道  九州大学, 工学研究院, 教授 (40202022)

研究分担者 西島 謙一  名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (10262891)
中村 崇裕  九州大学, 農学研究院, 教授 (10464398)
河邉 佳典  九州大学, 工学研究院, 准教授 (30448401)
花井 泰三  九州大学, 農学研究院, 教授 (60283397)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードバイオテクノロジー / バイオ医薬品 / 動物細胞 / セルエンジニアリング
研究実績の概要

動物細胞を対象としたセル・エンジニアリング技術をベースとして、トータルシステムとして体系化することで、セル・エンジニアリングサイクル(細胞デザイン、遺伝子回路の設計・作製、細胞加工、細胞選別・増幅、機能評価、評価結果に基づいた改良サイクルへのフィードバック)を構築する。先進的な技術を取り入れながら、セル・エンジニアリングにおける新しい要素技術の開発を行い、それらの技術を応用したバイオ医薬品や細胞医薬品の生産について検討することを目的としている。セル・エンジニアリングサイクルを確立することで、動物細胞の機能改変をシステム化するとともに、汎用かつロバストな技術とするために、いくつかの応用例について実証した。当年度では、これまでに開発に成功している、肝特異的転写因子遺伝子群を薬剤添加によって誘導することにより高肝機能を発現できるように改変したヘパトーマ細胞に、すでに報告されている遺伝子を導入することで肝機能のさらなる向上に成功した。これによって本研究のアプローチによって細胞のグレードアップが可能であることを示した。新たな遺伝子導入技術としてレトロトランスポゾンを用いる方法を提案した。また、筋組織構築技術では、筋組織を誘導できる筋芽細胞に低酸素に応答して血管新生因子を生産する遺伝子発現システムを導入し、組織内の酸素濃度に応じて血管誘導因子を生産できることを示した。さらに、iPS細胞から誘導した筋組織にこれまで開発してきた方法を適用して、人工筋組織の評価法として機能することを示した。これらの成果は、国際学術誌に掲載された。これ以外にも、新たなセル・エンジニアリング技術として、デザインされたホスト細胞の開発、人工遺伝子発現制御システムの開発、人工染色体を使ったトランスジェニックニワトリ作製技術の開発に取り組んでおり、これらを応用したバイオ医薬品生産に向けた技術開発を引き続き行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

動物細胞のセル・エンジニアリング技術を統合サイクルとして確立するための、新しい要素技術として以下の4項目の研究開発を行っている。
1.デザインされた新規ホスト細胞の開発 バイオ医薬品生産において繁用されているCHO細胞をホストとした生産細胞技術開発として、多様な外的刺激によって生産誘導可能な遺伝子発現回路を導入した細胞株の樹立を行っている。また、申請者が樹立したCHK-Q細胞をバイオ医薬品生産ホストとして機能化を図るために、効率的な高発現システムの開発についても引き続き検討している。
2.人工遺伝子発現制御システムの開発 前年度までに開発しているRNAをセンシングして目的遺伝子発現を誘導できるシステムに関して、具体的なシステムの応用例を示すための検討を行っている。さらに、翻訳プロセスの増強を行うための人工遺伝子発現システムの開発を開始した。
3.人工染色体ベクターを使ったTGニワトリ作製 ニワトリ始原生殖細胞(PGC)に人工染色体ベクターを導入する技術を確立し、人工染色体を有したPGCからニワトリを作出する新たなTGニワトリ作製法を開発している。人工染色体として利用する候補染色体にCRISPR/Cas9を使ってCre-loxPシステムが利用できるように改変するための遺伝子配列のノックインに成功した。さらに、同染色体遺伝子座にモデル抗体遺伝子のノックインを行うことができた。
4.TGニワトリ作製のための初期胚操作技術の開発 放卵後のニワトリ初期胚への遺伝子導入法としてエレクトロポレーション法を用いて、胚細胞へのダメージが少なく胚全体に遺伝子導入できる方法を確立している。トランスポゾンベクターによって胚細胞への遺伝子導入を行い、導入効率を測定した。

今後の研究の推進方策

1.デザインされた新規ホスト細胞の開発 CHO細胞やCHK-Q細胞をバイオ医薬品生産ホストとして利用するために、2で開発した人工遺伝子発現システムを搭載した細胞の開発を行う。
2.人工遺伝子発現制御システムの開発 あらかじめ設定された細胞内状況や外部刺激によって高発現を誘導可能な発現システムを新規に開発する。細胞内の特異的なRNAをセンシングして目的遺伝子発現を誘導できるシステムの開発を引き続き行う。翻訳プロセスの向上を目指した新たなシステム開発に取り組む。
3.人工染色体ベクターを使ったTGニワトリ作製 前年度までに人工染色体への遺伝子の導入にCre-loxPシステムを利用するためのドナーベクターを構築し、CRISPR/Cas9システムによって特定染色体遺伝子座へのドナーベクターの遺伝子配列導入を行ったPGCの作製に成功した。次年度は、このPGCからニワトリの作製を試みる。
4.TGニワトリ作製のための初期胚操作技術の開発 放卵後のニワトリ初期胚への遺伝子導入法としてエレクトロポレーション法を用いて、胚細胞へのダメージが少なく胚全体に遺伝子導入できる方法を確立している。前年度までに、特定遺伝子座への遺伝子導入を試みているが効率の点で困難であった。今後はPGCを用いたTGニワトリ作製に注力する。

  • 研究成果

    (22件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] HepG2-based designer cells with heat-inducible enhanced liver functions2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Kitano, Yoshinori Kawabe, Masamichi Kamihira
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 11 ページ: 1194

    • DOI

      10.3390/cells11071194

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] LINE-1 vectors mediate recombinant antibody gene transfer by retrotransposition in Chinese hamster ovary cells2021

    • 著者名/発表者名
      Feiyang Zheng, Yoshinori Kawabe, Mai Murakami, Mamika Takahashi, Kyoka Nishihata, Souichiro Yoshida, Akira Ito, Masamichi Kamihira
    • 雑誌名

      Biotechnology Journal

      巻: 16 ページ: 2000620

    • DOI

      10.1002/biot.202000620

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hypoxia-responsive expression of vascular endothelial growth factor for inducing angiogenesis in artificial three-dimensional tissues2021

    • 著者名/発表者名
      Shinya Masumoto, Akihiko Ono, Akira Ito, Yoshinori Kawabe, Masamichi Kamihira
    • 雑誌名

      Journal of Bioscience and Bioengineering

      巻: 132 ページ: 399-407

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2021.06.010

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Contractile activity of myotubes derived from human induced pluripotent stem cells: a model of Duchenne muscular dystrophy2021

    • 著者名/発表者名
      Kantaro Yoshioka, Akira Ito, Masanobu Horie, Kazushi Ikeda, Sho Kataoka, Keiichiro Sato, Taichi Yoshigai, Hidetoshi Sakurai, Akitsu Hotta, Yoshinori Kawabe, Masamichi Kamihira
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 10 ページ: 2556

    • DOI

      10.3390/cells10102556

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 人工遺伝子発現誘導システムを有するCHK細胞の組換え抗体生産評価2022

    • 著者名/発表者名
      河邉 佳典, 境 紘洋, 巖 流征, 上平 正道
    • 学会等名
      化学工学会第87年会
  • [学会発表] エストラジオール誘導型遺伝子発現制御システムを持つCHO細胞の作製2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木 瑚澄, Rahman Md Rashidur, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      化学工学会第87年会
  • [学会発表] ゲノム編集技術を用いた遺伝子改変ニワトリ始原生殖細胞株の作製2022

    • 著者名/発表者名
      金子 悠哉, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      化学工学会第87年会
  • [学会発表] Improved Cre recombinase for transgene integration in mammalian cells2022

    • 著者名/発表者名
      Ying BingBing, Yoshinori Kawabe, Akio Kuno, Masamichi Kamihira
    • 学会等名
      化学工学会第87年会
  • [学会発表] 誘導型遺伝子発現システムを用いたバイオ医薬品生産技術の開発2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木 瑚澄, Rahman Rashidur, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      第58回化学関連支部合同九州大会
  • [学会発表] セルエンジニアリングによる高肝機能誘導型ヒトヘパトーマ細胞の開発2021

    • 著者名/発表者名
      遠藤 淳平, 北野 裕之, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      第58回化学関連支部合同九州大会
  • [学会発表] 薬剤スクリーニングのための筋管機能評価システムの開発2021

    • 著者名/発表者名
      片岡 笙, 佐藤 圭一郎, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      第58回化学関連支部合同九州大会
  • [学会発表] トランスジェニックニワトリ作製のためのゲノム編集技術を用いたニワトリ染色体改変技術の開発2021

    • 著者名/発表者名
      金子 悠哉, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      第58回化学関連支部合同九州大会
  • [学会発表] 人工遺伝子発現システムを有する組換えCHK細胞の抗体生産誘導2021

    • 著者名/発表者名
      河邉 佳典, 巖 流征, 上平 正道
    • 学会等名
      第34回 日本動物細胞工学会2021年度大会 (JAACT2021)
  • [学会発表] 高肝機能誘導型ヒトヘパトーマ細胞の三次元培養における肝機能評価2021

    • 著者名/発表者名
      北野 裕之, Manuel Souvervielle, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      第34回 日本動物細胞工学会2021年度大会 (JAACT2021)
  • [学会発表] ヒトヘパトーマ細胞の遺伝子改変による高肝機能誘導2021

    • 著者名/発表者名
      遠藤 淳平, 北野 裕之, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      化学工学会第52回秋季大会
  • [学会発表] ニワトリOVA遺伝子座への遺伝子ノックインによる組換え抗体生産細胞の作製2021

    • 著者名/発表者名
      武末 和樹, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      化学工学会第52回秋季大会
  • [学会発表] 熱刺激によって高肝機能誘導可能な遺伝子改変ヒトヘパトーマ細胞株の特性評価2021

    • 著者名/発表者名
      北野裕之, Manuel Souvervielle, 河邉佳典, 上平正道
    • 学会等名
      第73回日本生物工学会大会
  • [学会発表] CHK細胞を用いた誘導型人工遺伝子発現システムによるscFv-Fc抗体の生産2021

    • 著者名/発表者名
      境 紘洋, 河邉 佳典, 巖 流征, 上平 正道
    • 学会等名
      第73回日本生物工学会大会
  • [学会発表] ヒトiPS細胞から誘導した筋管の張力測定による評価2021

    • 著者名/発表者名
      片岡 笙, 吉岡 貫太郎, 河邉 佳典, 上平 正道
    • 学会等名
      第27回日本生物工学会九州支部 大分大会
  • [備考] 上平研究室

    • URL

      http://www.chem-eng.kyushu-u.ac.jp/lab3/

  • [備考] 研究者情報―九州大学 上平正道

    • URL

      https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K002690/index.html

  • [産業財産権] 組換えヘパリン様物質、及びその製造方法2022

    • 発明者名
      上平 正道, 河邉 佳典, 秋山 京佑
    • 権利者名
      上平 正道, 河邉 佳典, 秋山 京佑
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2022-022594

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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