研究課題
四量体ヘモグロビンHbのアロステリック現象は、タンパク質科学における基本原理であり、最大の未解明現象である。Hbには強いアロステリック効果があり、付随して起こる大規模高次構造変化(アロステリック転移)がその根幹メカニズムと考えられている。私たちは7年前からX線1分子追跡法(Diffracted X-ray Tracking: DXT)を用いたHbアロステリック転移の1分子動態直接観察を部分的に成功してきた。DXTは、X線を用いた独自の時分割型1分子計測法であり、Hb分子内部動態1分子計測に適用可能な唯一無二の手法である。本研究では、一番重要な現象であるCO photolysisの光励起DXTに集中してデータを出している。以下の4つの点の改善により、結果としてレーザー照射後に15-30度のχ方向の回転運動がしっかり確認できるようになったが予想される分子動態の確率がまだ統計処理するには足りない。現在まで行われてきた4つの技術的改善点とは、①金ナノ結晶の533nm吸収効果の削除②カプトン薄膜基板の533nm吸収効果の削除③Hbの533nm吸収効果のない基板へのHb固定法④DXT測定時間内での酸素遮断を行った。①―③は533nmのレーザー励起時に吸収される現象があるとDXT検出時のχ回転運動を必要以上に励起することが分かった。カプトン薄膜は、PETポリエチレンテレフタレートを利用する。確かに今までのカプトンフィルムよりも信号のバックグランドは上昇してしまうが、サンプルセルの酸素遮断能を向上させるためにも、薄膜厚さ12ミクロンから25ミクロンへと変更したら回転観察効率は向上した。Hbの基板固定もHbのCysteine基をCoイオンで配向していたがCoイオンに533nm吸収効果があるのでCdイオンに変更した。これらの修正効果が総和して、分子動態が計測される確率が向上しつつある。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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