研究課題/領域番号 |
20H00330
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横川 隆司 京都大学, 工学研究科, 教授 (10411216)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノマイクロ加工 / BioMEMS / ナノマイクロバイオシステム / 分子モーター / 生体分子の物性 |
研究実績の概要 |
2020年度は、1)金ナノピラー構造を用いたナノパターニング法をkinesin-1分子以外のモータにも適用すること、および2)微小管の曲げ剛性とMAPs等の相関を明らかにすることについて研究を実施した。具体的な内容は以下の通り。
1)これまでにkinesin-1については、金ナノピラー構造と自己組織化単分子膜(SAM)を用いることで選択的な分子固定が可能であることを示した(Nanoscale, 2019)。2020年度は、ダイニン、ncd、CENP-Eなどそれぞれのモータに応じた固定技術を検討した。ナノピラーのサイズ(直径50 nm、間隔200~800 nm、高さ30 nm)、Silane-SAMによる非特異吸着抑制の条件、Thiol-SAMによるモータの特異吸着について条件を最適化した。
2)これまでに微小管の重合速度が、曲げ剛性を支配的に決めることを明らかにしており、これを論文化した(論文査読中)。その後、より生体内環境を模倣するためMAPsやPTMが微小管の物性にどのように影響するのかを調べてきた。しかし、重合速度の違いにより曲げ剛性が支配的に決まるため、重合後のタンパク質修飾による影響は十分に評価できなかった。これまでに実施した両端が自由端あるいは一端固定他端自由端の微小管について、そのブラウン運動から曲げ剛性を計測する方法では、FIONAを応用した微小管の位置決定精度が不十分であると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で提案していた①Kinesin-1の選択的分子固定技術が他のモータにも適用できることを明らかにする、および②微小管の曲げ剛性とMAPsおよびPTMの相関を明らかにするについて実施できたため。一方、課題②については重合速度の曲げ剛性に対する影響が大きく、微小管結合タンパク質の影響を評価するには至らなかった。そこで、三つ目の課題としてあげていたマルチモータの運動特性評価との関連を調べる研究を開始しており、順調に成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、生体内に存在するモータタンパク質の周期構造を生体外で再構築し、細胞内環境を再現することでモータの協働的な運動・力発生機能の創発現象を理解することが目標である。そこで、微小管結合タンパク質の影響を個別に評価するのではなく、微小管の集団運動からその曲げ剛性を推定することに挑戦する。これによって、マルチモータの協働性をin vitroで再構築することで、モータの運動機能や微小管の物性が細胞レベルの高次機能に対してどう影響しているか理解する。
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