研究課題/領域番号 |
20H00336
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
庄子 習一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00171017)
|
研究分担者 |
水野 潤 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 上級研究員(研究院教授) (60386737)
関口 哲志 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 上級研究員(研究院教授) (70424819)
秋津 貴城 東京理科大学, 理学部第二部化学科, 教授 (80348812)
古谷 正裕 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (80371342)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 多重微小界面 / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
本年度は、安定な多重微小界面を生成可能なマイクロ流体デバイスを開発し、それを用いて実際の化学合成反応の実施を試みた。詳細は下記のとおりである。 ①昨年度開発した多重微小界面生成デバイスを改良し、安定かつ再現性のある微小界面を生成可能なマイクロ流体デバイスの確立に成功した。これを用い1ミクロン以下の液滴の生成とその分離・融合に成功した。また流路内でのマイクロ液滴の詳細な動的挙動解析を行い、より効率的な多重界面化学合成反応への応用を試みた。 ②昨年度開発した反応溶液を個別にマイクロ液滴形状でトラップするデバイスを用いて、たんぱく質の結晶化を試み、18度24時間程度のマイルドな環境下で百ミクロン以上の大きさのたんぱく質結晶を得ることに成功した。これを破壊せずにデバイス外に取り出し、電子顕微鏡観察と元素分析を行い、たんぱく質結晶であることを確認した。 ③昨年度までの予備実験をもとに、実際の化学合成を行った。金属錯体含有たんぱく質について、UV-VISの分析結果から従来法では合成困難だった化合物を得ることに成功したことが示唆されたが、確定的な結果を得るにはまだいくつかの手法での化合物の分析・同定が必要である。 ④生成された化合物のインラインでの反応の過程について解析を行うため、マイクロ流体デバイス内での合成物のラマン分光・赤外分光・可視分光等の観察方法の検討を行った。その結果蛍光測定法・ラマン分光法が一番感度が良いことがわかり、現在本法で流体デバイス内を観察するシステムの開発に着手している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マイクロ微小界面の形成方法や、それを用いた化学合成法については当初の計画以上に進捗している。また、マイクロ流体デバイスでのインラインでの観察方法も確立しつつあり、今後の進捗により新しい知見が得られることが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究成果を受けて、マイクロ流体デバイスで作成した多重微小界面を用いて、実際の化学合成反応の実施とその結果生成される化合物の化学的・物理的評価を行い、本研究における当初の目的を達成するよう研究を推進する。具体的な研究計画は以下のとおりである。
①多重微小界面と流れ制御を応用したした新規化合物の合成:多重微小界面の混合、融合、分離等の技術を応用して、従来法では合成困難な新規化合物の作成に挑戦する。多重微小界面の詳細挙動の把握については、ソフトウエアによるAIと機械学習を活用し、マイクロ流体デバイスの設計にフィードバックする。さらに反応場のスケールによる生成物の違いについても検討する。 ②新規化学物質の反応過程の観察技術の確立:特に合成物のインラインでの反応の過程について解析を行うため、マイクロ流体デバイス内での合成物のラマン分光・蛍光分光等の観察技術を確立する。具体的には、新たなレーザー励起系とフォトマルによる計測系を試作し、これにより化学反応過程の詳細の解明を目指す。また、別途現在開発中のインラインラマン計測法の応用が可能かどうか検討する。 ③研究成果の発信と発展:得られた研究成果について、学会発表及び論文の形で情報発信を行う。また、本研究のさらなる発展のため、共同研究者が中心となって科研費等に申請を行い、より実用化に近い技術に昇華させる。
|