研究実績の概要 |
(1)光電流の非相反伝導:昨年度、巨大ラシュバ効果を示す表面構造Si(111)-√3×√3-(Tl,Pb)において、円偏光赤外線を照射して光電流を測定したところ、右回り円偏光と左回り円偏光で光電流の大きさに違いが生じる「円偏光フォトガルバニック効果(CPGE)」が発生することを発見したが、その論文を投稿し、レフェリーコメントに対して修正を行い、再投稿した。また、類似の表面超構造であるSi(111)-√3×√3-(Tl,Sn)においても非相反光伝導現象を発見したが、その光入射角依存性から単純な円偏光フォトガルバニック効果ではないことがわかり、それはスピンの歳差運動によって生じる面直スピン成分による逆スピンホール効果で説明することができた。 (2))磁性トポロジカル絶縁体による非相反伝導:昨年度までに、トポロジカル絶縁体であるBi2Te3薄膜結晶中にSbおよびMnをドーピングして、フェルミ準位をバルクバンドのエネルギーギャップ中にチューニングすることで、異常ホール効果およびトポロジカルホール効果を発見して論文を出版した。本年度は、この物質系の強磁性発現のメカニズムを明らかにした。つまり、(Bi1-xSbx)2Te3 薄膜の上下にMn(Bi1-xSbx)2Te4薄膜を付けた場合、Sbの混入によってスピン間距離を短くすると強磁性転移温度が向上することから超交換相互作用ではなくvan Vleck モデルまたは Bloembergen-Rowland モデルで説明できることが分かった。 (3)イットリウム(Yb)原子をインターカレートしたグラフェンでの強磁性および超伝導の発現を発見した。SiC(0001)基板とグラフェン層の間にインターカレートされたYb3+イオンが強磁性を担い、2層グラフェン間にインターカレートされたYb2+イオンが超伝導を担っていることが光電子分光および光電子ホログラフィの測定から明らかになった。
|