研究課題/領域番号 |
20H00344
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
一柳 優子 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (90240762)
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研究分担者 |
阿部 真之 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (00362666)
千本松 孝明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70216563)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁性体 / nanoparticle / hyperthermia / superparamagnetic / imaging / theranostics / cancer |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、独自の製法でスーパースピングラス(SSG)磁気ナノ微粒子を生成し、特に複素磁化率に注目しながら磁気的性質と熱エネルギー蓄積機構を明らかにするとともに、官能基や葉酸を修飾し、医療応用を可能にすることである。診断と治療を同時に行う時代を切り開くことを目指す。 当該年度には、以下の3点について取り組んだ。1.SSGナノ微粒子の作製と発熱機構の分析、2.細胞死のメカニズムの分析、3.イメージングとしての機能の探索、である。 1.については、主に粒径が12-19 nmのニッケル―亜鉛フェライト(Ni-Zn ferrite)を作製し、生体適合性を考慮してポリエチレングリコール(PEG)で修飾した。交流磁化率の測定結果と、交流磁場中でのサンプルの温度上昇を分析して、発熱量の実験値と計算値の比較をし、ネール緩和が支配的な粒径を決定した。 2.については、がん細胞を用いたハイパーサーミア実験を施したのちの細胞を、ネクローシス(壊死)/アポトーシス(自然死) キットにより細胞死の状態を調べた。死細胞のうち多くがプログラム死によるアポトーシスであることが明らかになり、病理学的に重要な結果を得ることができた。温熱療法は熱による焼死ではなく、別の要因が関与している可能性があり、新たな知見を得ることができた。 3.についてはMRIの造影剤としての有用性について、緩和現象とMR曲線の関係を精査して考察した。従来のフェルカルボトランの組成である、Fe2O3に比べ、Mn-Zn系やMn-Gd系のフェライトが、 きわめて優位なMR造影効果を示すことが示唆された。MRI以外のイメージング特性として、新奇な手法である、磁気微粒子イメージング(Magnetic particle imaging, MPI)についての機能も検討した。第3高調波成分の測定により、高い機能が期待されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に示したように、SSG微粒子を作製することができ、そのふるまいを交流磁化率の実部、虚部にて分析し、磁化率と熱エネルギーの蓄積機構の関係を示すことができた。磁気クラスターを生体適合性の優れたPEGで修飾することも実現できた。MRIの造影剤としての特徴も、期待できる機能を見出すことができ、新たな手法である磁気微粒子イメージング、MPIの材料としての可能性も明らかになってきている。さらに、ハイパーサーミアを施したあとの、細胞死のメカニズムの分析も実施することができ、制約がある状況でありながら、順調に進捗している。さらに、この細胞死のメカニズムの解析から、予想外の新たな発想を生み出すことができた。これは、提案している研究である、磁気ハイパーサーミアが、熱によりがん細胞を焼き殺すのではなく、ヒートショックプロテインなどの免疫にかかわるタンパクの出現によるものではないかという示唆である。この内容は当初の計画以上の進展といえる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、新たな知見と興味深い結果が得られたため、さらに研究を進めたいところではあるが、新たな研究資金が得られなかったのが一番の問題である。 また、共同研究者との行き来が少しずつ可能にはなってきたものの、動物実験を進めるに十分な準備ができていなのが悩みである。これについては、埼玉医科大学にて、動物実験計画の申請を進めており、承認を早くとっておき、遂行が可能になったところで直ちに実施できるようは手はずを整えている。
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