研究課題/領域番号 |
20H00348
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
井上 振一郎 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 深紫外光ICT先端デバイス開発センター, センター長 (20391865)
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研究分担者 |
HAO GUODONG 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 深紫外光ICT先端デバイス開発センター, 主任研究員 (30773866)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 深紫外LED / ファノ共鳴 / ナノ周期構造 |
研究実績の概要 |
深紫外LEDは、ウィルスの殺菌や水銀ランプの代替等において期待され、社会的に高い注目を集めている。しかし、コンタクト層で発生する強い光吸収や自己発熱に伴うドループ現象などによって、世界的に未だ低い外部量子効率、光出力レベルにとどまっている。本研究では、深紫外LEDを動作させるうえで避けられないコンタクト材料による光吸収の問題を正面から捉え、素子内に吸収体が含まれていても、LED活性層近傍の半導体・金属ナノ構造により放射角度分布を狭域に制御することで、シングルパスで深紫外光を素子外部に効果的に取出す手法の創出を目指している。研究開始1年目である2020年度では、電場分布や放射特性に関する理論的な解析を実施し、提案の構造において、ファノ共鳴効果による横方向への放射抑止や、前方への狭域化された放射が可能であることを確認した。 深紫外LED内部の放射パターン制御手法として、活性層近傍の多層系半導体・金属ナノ構造によるファノ共鳴を利用し、また金属ナノ構造としては、良好なp型オーミック接触を実現可能な電極構成部材(Ni/Al)を活用した。活性層近傍の電極層とp型コンタクト材料であるp-AlGaN/GaN層を相補的に積層し、ナノ周期構造化した。金属ナノ構造のプラズモン近接場と半導体ナノ周期構造場との相互作用が最大化する共鳴波長においてファノ共鳴を励起した。構造パラメータを調節することで、横方向への伝搬モードを禁止しつつ、LED発光波長(@265nm)と、ファノ共鳴による電極方向からの反射率ピーク波長(低光吸収での散乱共鳴状態)とを重ね合わせた。また同時に、電場強度の放射角分布を制御し、放射パターンが前方(基板方向)の光取出し角度範囲(ライトエスケープコーン内)に収まるように最適化を行った。これらの検証結果により、横方向への無駄な光伝播や、電極方向への光吸収を抑制できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載の通り、当初の研究計画通り、概ね順調に研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、深紫外LEDの極めて低い光取出し効率の問題を解決するために、基板界面における全反射を抑制するだけでなく、深紫外LED内の放射パターン自身を制御することにより、内部光吸収と全反射の発生そのものを本質的に抑制する新たな手法を提案し、光取出し効率の飛躍的な向上を目指している。今後は、金属・半導体多層系ファノ共鳴励起による深紫外LEDの光取出しと損失に係る理論検証と解析をさらに深化させていくとともに、これらの実験的な実証を進める。これにより、深紫外LEDの重要課題の解決に係る新たな知見が得られるだけでなく、深紫外LEDの光取出し効率や外部量子効率について、さらなる画期的な向上が期待できる。
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