研究課題/領域番号 |
20H00354
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
谷口 尚 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 拠点長 (80354413)
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研究分担者 |
町田 友樹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00376633)
山田 貴壽 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (30306500)
小島 一信 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30534250)
宮川 仁 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (40552667)
秩父 重英 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80266907)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 六方晶窒化ホウ素単結晶 / 遠紫外線発光 / 合成合成 / インターカーレーション |
研究実績の概要 |
本課題では現行の不純物がppmにとどまっている六方晶窒化ホウ素(hBN)の高純度化のレベルをppb領域にまで引き上げた高品位化を実現し、hBNの遠紫外線発光素子の高効率化を始めとしたBNの科学の基礎を先導すること、機能発現を目指したhBN層間へのインターカーレーションに挑むことを目的としている。 2021年度は前年に引き続き、①BN 結晶の高品位化②高輝度遠紫外線発光効率の評価③新機能発現を目指したhBN層間へのインターカーレーション実験④国内外の2次系原子層デバイス研究者にhBN結晶を提供した。 高品位化では高純度hBN合成に有用なBa-N系溶媒の改質において添加するBa化合物の純度(水和物)の影響を系統的に評価した。 多数のhBN結晶を積分球を用いた外部量子効率(EQE)測定によって評価し、高純度化された(管理番号の大きい世代の)試料におけるEQEがおよそ3%(平均値。最大値としては6%程度が得られることもある)で一定になっていることを確認した。 時間分解発光計測においてBN試料の共鳴ラマン散乱等の影響を避けるため、チタンサファイヤレーザの第4高調波を用いた時間分解フォトルミネッセンス(TRPL)ではなく、フェムト秒レーザ励起によるフェムト秒光電子銃を用いた 時間分解カソードルミネッセンス(TRCL)測定を用いてバンド端発光の発光寿命評価を行うことを検討し、TRCL装置の立ち上げ作業を行った。 インターカーレーション実験では、電気化学的手法によるK添加により作製した試料をTEMで観察した結果、EELSでKが層間に局在していることが示唆された。ラマン分光法による評価では、結晶性を損なわずにドーピングされていることが明らかとなった。ドーピングによる抵抗低下は観測されず、電界効果トランジスタ構造によるゲート変調による評価手法の確立が課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧合成における育成溶媒の改質条件への新たな洞察を得ると供に、得られたhBN単結晶中の残留炭素不純物濃度がEPR法により定量が可能となり、遠紫外線発光効率との相関も明らかになりつつある。更にイン-ターカーレーション実験ではKドープの可能性が示唆されており、キャリア輸送特性評価のフェーズに移行する。更に、高品位化がなされたhBN結晶は2次元系光電子デバイス用基板として国内外で広く活用されるなど、研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き合成したhBN単結晶の発光特性の評価を進め、溶媒改質の効果を確かめた上で、EPR評価により残留不純物濃度を確定する。残留炭素不純物量と遠紫外線発光特性との相関を、残留炭素濃度の希薄極限まで追求する。この際、2021年度に立ち上げた時間分解フォトルミネッセンス(TRPL)装置を用いてhBN結晶のバンド端発光領域におけるバンド端発光の発光寿命評価(τ_CL)の定量を行い、試料間の比較や、既報値を用いた校正によりτ_CLから内部量子効率(IQE)を半定量する。遠紫外線発光効率の炭素濃度依存性を明らかにし、BNの科学に貢献する。 インターカーレーション研究では、引き続きカリウム(K)やナトリウム(Na)の ドーピングを進めると供に、キャリア輸送特性をはじめとする半導体特性の評価を行う。 2021年度に引き続き、国内外の2次系原子層デバイス研究者にhBN結晶を提供し、得られた知見を、hBN 結晶の高品位化、新たな機能発現・制御に帰還する。
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