研究課題/領域番号 |
20H00361
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
奥野 喜裕 東京工業大学, 工学院, 教授 (10194507)
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研究分担者 |
小林 宏充 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (60317336)
藤野 貴康 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80375427)
高奈 秀匡 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (40375118)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | MHD発電 / 電力工学 / エネルギー効率化 / 省エネルギー / 電磁流体力学 |
研究実績の概要 |
本研究は,低環境負荷シードフリー高効率MHD発電の実用化を見据えた高性能化実証を推進し,その開発ロードマップを確固たるものにすることを目的としている。本研究課題での学術的問いは,既往研究では未到の 1) 予備電離(希ガスプラズマ生成)の高効率化 と 2) 発電機内プラズマの最適化 を実証・達成することである。令和3年度は,令和2年度(本研究課題初年度)での 1) 高周波予備電離手法の高度化の観点から,実験的に高周波誘導コイルのターン数や配置の発電性能に与える影響を明らかにしたこと,ならびに 2) 数値解析によるプラズマ安定化制御と性能評価の観点から,二次元非定常数値解析により発電機内プラズマの均一安定性について明らかにしたことを受けて,下記の2点に大きく焦点を絞って遂行し,本研究を一層推進した。 1) 予備電離希ガスプラズマMHD発電におけるプラズマ流体諸量の把握と高度化 ディスク形状発電機を用いた衝撃波管駆動MHD発電実験において,高速度ビデオカメラを使用して発電機内プラズマ流体挙動を観察し,高周波誘導コイルの配置が発電性能に与える影響を発電機内プラズマ流体諸量の変化と関連付けて明らかにした。また,新たな研究展開の前準備として,作動気体としてこれまで使用してきたアルゴンに加え,ネオンやネオンに微量のキセノンを添加したガス等を用いた実証試験を行い,その発電性能の基礎データを取得した。 2) 数値シミュレーションによる発電機内プラズマの挙動解析と性能評価 まず輻射を伴うプラズマ生成・消滅過程を考慮した二次元数値シミュレーションを行い,輻射損失が発電性能に与える影響を検討した。また,実験研究に呼応して,アルゴンに加え,ネオンやネオンに微量のキセノンを添加したガス等を用いた場合の発電性能を二次元数値シミュレーションにより明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は,令和2年度(本研究課題初年度)の成果を受けて,当初の計画どおり,1) 予備電離希ガスプラズマMHD発電におけるプラズマ流体諸量の把握と高度化,ならびに 2) 数値シミュレーションによる発電機内プラズマの挙動解析と性能評価に向けた研究に着手した。 具体的には,1) に関しては,アルゴンを作動気体とする発電実験において,高速度ビデオカメラを使用して発電機内プラズマ流体挙動を観察し,プラズマは流体の流れとともに発電機下流に流れるが,プラズマからの発光がより強く,またその構造がより均一になると発電性能が向上すること(間接的ではあるが,発電機内プラズマの電気伝導度の向上)を実験的に明らかにした。また,ネオンやネオンに微量のキセノンを添加したガス等を用いた発電試験を行い,ネオンを作動気体とする場合は不均一なプラズマ構造が観測される一方で,キセノンを添加することでプラズマはより均一となり,発電性能が向上することを実証した。 2) に関しては,まず,輻射を伴うプラズマ生成・消滅過程を考慮した二次元プラズマ電磁流体数値シミュレーションを行い,商用規模の大型発電機において,輻射損失が発電性能に与える影響は比較的小さく,本研究のシードフリー方式は有効であり,従来のシードプラズマ方式と同等の性能を持ち得ることを示した。このことは,実用化向けた開発ロードマップを見据える上で極めて重要な成果となった。またアルゴンに加え,ネオンやネオンに微量のキセノンを添加したガス等を用いた場合の発電性能に関する二次元数値シミュレーションを行い,ネオンに微量のキセノンを添加することで,発電性能の向上と予備電電力の低下が両立できることを示した。 これらの研究成果は,確実に次年度以降の本研究の進展に資するものとなっており,「おおむね順調に進展している」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,当初の計画どおり,1) 予備電離希ガスプラズマMHD発電におけるプラズマ流体諸量の把握と高度化,ならびに 2) 数値シミュレーションによる発電機内プラズマの挙動解析と性能評価に取り組み,前者では発電機内のプラズマ挙動と発電性能の関係を実験的に明らかにするとともに,後者では作動気体としてネオンに微量のキセノンを添加することの有用性等について明らかにした。これらの成果を受けて,次年度は,下記の大きく3点に焦点を絞って遂行し,本研究を一層推進する。 1) 希ガスプラズマ生成に必要な電力(正味の予備電離電力)の見積もりと発電性能の統一的な評価 発電性能のより正確な評価,特に数値シミュレーションとの比較においては,希ガスプラズマ生成に必要な電力(正味の予備電離電力)の見積もりが不可欠となっている。ここでは,実験で得られる計測諸量から正味の予備電離電力を評価する方法を構築し,それを評価軸として発電性能の統一的な評価を試みる。その際に,これまでの結果に,入口圧力や印加磁束密度依存性等の基礎特性を加え,より包括的に発電性能を評価する。 2) キセノンシードのプラズマ挙動と発電性能に与える効果 今年度の実績をさらに発展させ,ネオンに添加するキセノンのモル分率を変化させた発電実験を行い,プラズマ構造や発電性能,また正味の予備電離電力に与えるシード率の依存性をより詳細に明らかにする。 3) 数値計算による実験結果の理論的裏付けと評価 これまでの研究実績から,本研究で提案するシードフリー方式の発電実証および数値シミュレーションの高度化が進展し,実験と数値シミュレーションを比較検討できる段階に入ったことから,より高度に,実験で使用する発電機,実験条件を模擬した数値シミュレーションを行い,発電実験結果の理論的裏付け,実験方針への定量的フィードバック,また改善に向けた具体的な提案を行う。
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